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生徒の強みに気づき、「できる」を育てる心理学 学校で使えるソリューション・フォーカスト・アプローチ

13面記事

書評

伊藤 拓 著
一緒に考え、試し、見つける手法

 本書の中核は、「注意する」「叱る」ではなく、生徒のできているところや良いところ、強みを引き出しながら、より良い方向に導く「ソリューション・フォーカスト・アプローチ(SFA)」である。
 第1・2章で生徒理解のための心理学的な見方と基本的な対話スキルを、第3・4章でSFAの概要と、これに基づく具体的な対話方法を解説、紹介する。
 特に重要なのは、自身の生徒理解は客観的でも正しいものでもなく、さまざまなバイアスの影響を受けていると自覚することや、生徒を「わかった気」にならず、自分はその生徒のことを知らないのだから、生徒自身から「教えてもらう」という姿勢、そして、効果的な方法は生徒によって違うので、できるようになるための方法を生徒と一緒に考え、試し、見つけていくことなどだ。
 「なぜ」はできるだけ使わない、生徒から聴いた話の要点を簡潔にまとめて伝え、確認するなどの実践的なスキルや、できているところに焦点を当てようとするあまり、生徒が本当は困っていることを話したいのにそれを十分聞かずに話を進めてしまう「落とし穴」の注意なども、とても分かりやすい。
 要は、「わかった気」になって「上から目線」でやってはいけない、ということ。今日から実践に生かせるテキストとしてお薦めしたい。
(1980円 大修館書店)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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