北欧の教育新潮流 未来につなぐ子育てと学び
13面記事
佐藤 裕紀・林 寛平・中田 麗子・本所 恵・北欧教育研究会 編著
新教科AIなど背景含め深堀り
教育最前線地域として、世界に大きな影響を寄与し続けている北欧。本書はこの北欧の教育や社会に関心を持ち続ける研究者たちがまとめた教育の新潮流である。北欧の人々の挑戦や葛藤を、背景を含めた等身大の姿で深掘りしている。
例えば、スウェーデンの高校で新しく創設された「新教科AI」。特定の分野に特異な才能を放つ子どもたちのための「尖った教育」。若者が学び直せる「セカンドチャンス・スクール」や「特別学校が適応学校に名称変更」など興味が引かれる。「幸福について考える博物館」などは読了後訪れたくなった。
一方、先進的な取り組みの紹介にとどまらず、マイナス面の指摘も参考になる。「デジタル教科書の見直し」では2017年に始まった施策「デジタル・コンピテンス育成」だが、紙の見やすさ、要点の記憶の優位さなど、紙の教科書への大幅な見直しが始まった。
本書はさらに「スクールタクシー」や「子どもにも年休10日」など文化・制度・生活等の教育新事情あれこれが満載で、学ぶことへの動機付けと楽しみの追求に、思わず共感したりラインを入れたりと大変示唆に富む。
新しい学校教育に取り組もうとしている人、教育施策に携わっている人、リーダーとして創発的なアドバンスを求めている人、一読に値する。
(2420円 明石書店)
(青木 一・信州大学大学院特任教授)

