学び続ける教師を支える大学通信教育 令和の日本型教育に対応した学び直しや専門性を身に付ける場に
12面記事
教育の質向上に向けて、学び続ける教師のロールモデルになる
現職教師が働きながら教科・校種の免許を取得できる「大学通信教育」は、教職経験を考慮した複数免許取得や、時代に対応した新しい知識や専門性を身に付ける場として、より一層重要な役割を担うようになっている。
教師に求められる専門性の高度化
すべての子どもたちの可能性を引き出し、変化の激しい社会を生き抜く力を育む「令和の日本型教育」の実現には、教師自身が絶えず学び続ける姿勢を持つことが不可欠だ。近年、社会と接続した教育の重要性が高まる中で、学校現場で求められる専門性は急速に拡大している。教育課程も、探究学習やICTの活用、学びの個別最適化、多様性理解、キャリア教育、地域連携など多岐にわたるテーマが取り入れられるようになっており、教師がそのための新しい知識や技能を継続的に習得し、教育の質を維持・向上させることが、今や教育改革の基盤となっている。
こうした中で、小学校では英語や理科などで2022年度から推進してきた高学年に加え、4年についても教科担任制が進められるようになっており、中学校教員との連携や派遣制度も拡充されている。その結果、小中両免許状を持つ教員の需要が高まり、免許の併有がキャリア形成の前提となりつつある。また、臨時免許や免許外教科担任が多い「情報Ⅰ」における正規免許取得者の確保が課題となる中で、大学通信教育によって、すでに教員免許を持つ者が情報科免許を追加取得することも期待されている。
さらに文科省は、教諭と主幹教諭の間に新たに「主務教諭(ミドルリーダー)」を設け、学校組織の中核を担う中堅層の育成を進めている。これは、管理職に昇任しなくても高度な専門性を発揮できるキャリアパスを示すものであり、教師の役割が多層化する現状を踏まえた施策である。
こうした動きの中で、教員には「教科専門性の深化」と「学校運営に関わるマネジメント能力の強化」という2つの軸での成長が求められており、従来の研修制度や校内研究だけでは十分に対応できなくなっている。
教師に広がる「リスキリング」の波~大学通信教育という選択肢を~
急速な社会変化と技術革新の時代において、学び直し(リカレント教育)や技能再開発(リスキリング)は、産業界のみならず教育界にも不可欠な概念となった。教師も例外ではなく、AIの活用、デジタル教材の設計、特別支援の知見、多文化共生教育など、次代の教育に必要な知識をアップデートし続けることが求められている。
特に、これまで現場経験を積み上げてきた中堅・ベテラン教員にとっても、制度改革や技術革新のスピードに合わせて自己研鑽を図ることが欠かせなくなっている。教育DXの進展に伴い、学びの場そのものが変化しており、教師自身が学習者として新しい教育環境を体験し、理解することが求められているからだ。
このような状況の中、注目を集めているのが「大学通信教育」である。通信制大学や大学院は、働きながら学び続ける社会人の学習ニーズに応える仕組みとして発展してきたが、教員にとっても「現職を続けながら学位・免許を取得できる」実践的な教育機会として再評価されている。
通信教育では、科目履修やレポート提出をインターネット上で完結できる大学が増え、スクーリングもオンライン化が進んでいる。これにより、地方や離島の教員、家庭や子育てと両立する教員でも、自分の生活リズムに合わせて学習を進めることが可能になった。
また、文科省が推進する「複数免許状取得支援制度」や自治体の研修費補助と連動することで、経済的負担を抑えながら免許状の更新・追加取得を行えるようになっている。教育現場で求められる専門資格(特別支援学校教諭免許、情報・英語・理科などの教科免許)を通信教育で取得する教員が年々増加しており、現場からの信頼も厚いことがうかがえる。
通信教育がもたらす新しい学びの形
大学通信教育の魅力は、単に免許を取る手段にとどまらない。現職教員同士がオンライン上で議論を交わし、実践事例を共有し合うことで、学びが「実践知のネットワーク」として広がっていく点にある。特に、教育現場で直面する課題(児童生徒の不登校対応、ICT授業設計、校務効率化など)をテーマにした研究や実践報告が多く、現場と大学が相互に学び合う関係が形成されつつある。
例えば、大阪教育大学では2020年度からオンライン教員研修プラットフォームを開始し、現職教員の自律的・継続的な学びを支援。受講者同士がフォーラムやZoomを通じて、教育課題や授業改善について意見交換を行う議論の場となっている。立命館大学は教職大学院のオンライン受講制度として、2023年度より現職教員が勤務を続けながら大学院で学べる制度を開始。オンライン講義内でのディスカッションや、土日のスクーリングでのグループワークを通じて、教育現場の課題を共有。理工系・社会学系など多様なバックグラウンドを持つ教員が集まり、異なる視点から教育を語り合う場となっている。
これらの事例に共通するのは、「地理的制約を超えた教員間の学び合い」が実現している点だ。今後は、生成AIや教育データの活用により、より個別最適化された議論支援や実践知の蓄積が期待される。
自己成長が学校改革を推進する
加えて、通信制大学の多くは、教職課程に心理学、福祉、データ分析、教育マネジメントなどの科目群を組み込み、複眼的な教育観を育むカリキュラムを提供している。これは、「令和の日本型教育」が掲げる「知・徳・体の調和」と「個別最適な学びの支援」を支える教育人材を育てる方向性と重なるものである。
学校教育の質を高めるには、制度や施設整備だけでなく、教師一人ひとりの学びが原動力となる。教師が主体的に学び直しを行い、得た知見を同僚や地域と共有することが、結果的に学校全体の改善と組織的成長を促す。
大学通信教育は、そのサイクルを支える最も柔軟で持続可能な仕組みであり、「教師が学び続ける学校文化」を根付かせる役割を果たしている。文科省は、リカレント教育の推進を掲げ、社会人の学び直しを支援する制度を拡充しているが、その中でも「教育職」は特に重要な対象と位置付けられている。教育の質は、教師の学びの質に直結するからである。
教師の学びが未来の教育をつくる
社会の変化が激しさを増す今、学校教育はもはや「安定した知識伝達の場」ではなく、「共に学び、成長し続ける場」へと変わりつつある。その変化を支えるのは、現場の教師一人ひとりの学びである。大学通信教育は、教員がキャリアのどの段階にあっても、自らの学びを再構築し、子どもたちに新しい学びの価値を示すための力強い手段である。
「教師の学びが教育を変える」。この理念を支える通信教育の意義は、今後さらに高まっていくに違いない。教師が自らの成長を止めない限り、教育は進化を続ける。その学びの輪を広げていくことこそ、「令和の日本型教育」を支える最大のカギである。

