デジタル学習基盤を前提にした改訂に向け、期待される企業の伴走型ICT支援
10面記事
ICT教育の充実には、企業の学校に寄り添った支援がカギになる
ICT環境の整備が進む一方で、「授業でどう活かすのか」という課題は依然として多くの先生方を悩ませている。次期学習指導要領に向けた論点整理では、ICT教育のさらなる充実が柱として示され、子どもたちの「主体的・対話的で深い学び」を支えると同時に、教員の負担を軽減する活用が求められている。こうした実践を全国規模で定着させるためには、企業による伴走型の支援が不可欠であり、授業改善・学習意欲向上・教員負担軽減の3つの視点から新しい学びの姿が期待されている。
ICT教育のさらなる充実に向けて
「ICT環境は整備されたけれど、日々の授業でどう活かせばいいのか」――。これは多くの先生方が抱える共通の課題である。タブレット端末や電子黒板、クラウド型学習管理システムなど、学校現場におけるICT環境は急速に整備されてきた。しかし、整備された環境を教育効果につなげるためには、単なる機器の導入にとどまらず、授業改善や学習意欲の向上、さらには教員の負担軽減に資する活用が不可欠である。
こうした中、9月に中央教育審議会特別部会が示した次期学習指導要領に向けた「論点整理」では、ICT教育のさらなる充実が重要な柱として提示された。これは、ICTを前提とした学習基盤の整備が、今後もスタンダードとなることを意味している。それだけに、今後の教育改革において、企業による伴走型のICT支援は、学校現場に寄り添いながら持続的に成果を生み出すためのカギとなる。
ICT活用に求められる2つの視点
学校現場におけるICT活用には、2つの視点が欠かせない。1つ目は、子どもたちの「主体的・対話的で深い学び」に資する活用にすることだ。すなわち、知識伝達型から、探究的な学びや協働的な学びを支える仕組みとしてICTを位置づける必要がある。例えば、AIを活用して学習履歴を分析し、児童生徒ごとの理解度に合わせた課題を自動提示する仕組みは、個別最適化された学びを可能にする。成果をクラウド上で即座に共有し、仲間との対話や振り返りにつなげることで、学びの質は飛躍的に高まる。
2つ目は、教員の負担を軽減し、授業づくりや子どもと向き合う時間を確保することにある。教材準備や成績処理など、従来は教員が膨大な時間を費やしてきた業務をICTが効率化することで、教員は本来の教育活動に集中できる。ICTは「働き方改革」の観点からも重要な役割を担う。
先進校の事例に見る可能性
すでに一部の先進校では、次のようなICTを活用した新しい学びの姿が実現している。
・AIによる学習履歴分析:児童生徒の解答データをAI解析し、理解度に応じた課題を自動生成する。これにより、学習の遅れを早期に発見し、個別支援につなげることが可能となる。
・クラウド共有による協働学習:成果物をクラウド上で即座に共有し、仲間同士でコメントや質問を交わす。これにより、学びが「一人のもの」から「みんなのもの」へと広がり、対話的で深い学びが促進される。
・データ活用による授業改善:蓄積された学習データを分析することで、授業設計の改善点を明確化し、次の授業に反映させる。
こうした取り組みは、ICTが便利な道具としてだけでなく、学びの質を高める「教育基盤」として機能することを示している。

ICTを活用した課題解決型の授業が主流に
企業の伴走型支援の必要性
ただし、今後このような取り組みを全国規模の学校で実施していくためには、継続的に学校現場に寄り添い、授業改善や運用定着を支える仕組みが求められている。それゆえ、企業には次のような視点を持ち、支援していくことが必要になっている。
①授業改善の視点:企業は、教育現場のニーズに即した教材やアプリケーションを提供するだけでなく、授業設計に関する研修やコンサルティングを行うことで、教員の授業改善を支援する。
②学習意欲の向上の視点:ゲーミフィケーションやインタラクティブ教材など、子どもたちが主体的に学びに向かう仕掛けを企業が開発・提供することで、学習意欲を高める。
③教員の負担軽減の視点:成績処理や教材配信の自動化、校務支援システムの統合など、教員の業務を効率化するソリューションを企業が提供することで、教員の働き方改革に寄与する。
次期学習指導要領を見据えて
次期学習指導要領では、ICT活用が前提となる学習基盤の整備が一層強調される見通しだ。これは、教育の質を高めるだけでなく、社会全体のデジタル化に対応する人材育成の観点からも重要である。そこで、小・中・高等学校別に実装を検討されている内容について整理すると、次のようなものになる。
◆小学校における取り組み
小学校段階では、情報活用能力の体系的育成が新たな重点課題として位置づけられている。これまでの学習指導要領では、プログラミング教育が各教科などに分散して導入されていたが、次期指導要領では「総合的な学習の時間」に「情報の領域(仮称)」を新設し、情報活用能力を横断的に育成する方針が示されている。
この領域では、「情報の収集・整理・発信に関する基本的な技能の習得」「デジタル機器の操作や情報モラルに関する理解」「プログラミング的思考の育成と簡易なアルゴリズムの活用」「データの可視化や表現方法の工夫を通じた思考力の育成」といった内容が想定されている。
◆中学校における取り組み
中学校では、技術・家庭科の「技術分野」における「D 情報の技術」の内容を中心に、情報活用能力の一層の充実が図られる予定だ。現行の指導内容に加え、「3Dプリンターやモデリングツールの活用」「生成AIやセキュリティ技術の基礎理解」など、情報技術を課題解決の手段として活用する力を育成することが検討されている。
また、「探究的な学び」との連携も重視されており、総合的な学習の時間や理科・社会科などにおいて、情報収集・整理・発信のプロセスを通じて、情報活用能力を実践的に育成することが求められている。
◆高等学校における取り組み
高等学校では「情報Ⅰ」が必修化されているが、さらなる情報活用能力の高度化が求められている。特に強調されているのは、デジタル人材育成の観点から、情報科の内容を探究的な学びと密接に結びつけることだ。
具体的には、「データサイエンスやAIの基礎的理解の導入」「情報倫理、セキュリティ、プライバシーに関する探究活動」「社会課題に対する情報技術の応用」を学ぶ際に、地理総合、公共、理数探究などとの連携を前提としたカリキュラム設計が求められている。
加えて、「情報Ⅱ」の選択者に対しては、より高度なプログラミング、ネットワーク構築、データベース設計などの専門的内容を提供し、大学や産業界との連携による実践的な学びを展開することが期待されている。
企業の役割はますます大きくなる
ICT技術の進化は著しく早い。そうした点を踏まえても、整備されたICT環境を有効に活用して教育効果につなげるため、または、次期学習指導要領を見据え、新しい学びの姿を全国の学校で実現するためには、企業の果たす役割はますます大きくなる。
授業改善、学習意欲の向上、教員の負担軽減―。この3つの視点を基盤に、ICTは教育の未来を切り拓く力となる。先生方が安心してICTを授業に取り入れ、子どもたちが主体的に学びに向かう環境を整えるために、伴走型支援の充実が今こそ求められているのだ。

