日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

学食を「学内の憩い・交流の場」へ キャッシュレス化による運営効率化が後押し

19面記事

施設特集

学校の魅力を可視化する施設に

 近年、学校における学食の役割が大きく変化している。かつては昼食を提供するための「給食供給の場」として位置付けられてきた学食であるが、現在では児童生徒が集い、交流し、気持ちを切り替える「学内の憩い・交流の場」へと機能を広げつつある。背景には、児童生徒の嗜好や価値観の多様化、健康・栄養志向の高まりに加え、学校経営における施設面での差別化の必要性がある。
 とりわけ私立学校では、学食を「学校の魅力を可視化する施設」として捉え直す動きが顕著である。カフェテリア形式の導入や、選択制メニューの充実、空間デザインへの投資などを通じて、入学希望者や保護者への訴求力を高めるねらいがある。また、共働き世帯の増加や保護者ニーズの変化により、学校内で安心・安全な食環境を提供することの重要性も高まっている。

学生の利便性向上~モバイル注文+キャッシュレス運用~

 こうした流れの中で注目されているのが、混雑緩和や運営効率化を目的とした無人店舗・キャッシュレス決済の導入だ。例えば開成学園では、昼食時間帯に食券機へ生徒が集中し、長い待ち時間が発生していたことが課題であった。そこで生徒自らがモバイル注文Webアプリ「学食ネット」を企画・開発し、PayPayによるキャッシュレス決済を導入した。注文から支払いまでをスマートフォンで完結させ、食堂では受け取りに専念する仕組みとしたことで、行列の解消と昼休み時間の有効活用につながっている。生徒主体で利便性向上を実現した点は、情報活用能力や課題解決力を育む教育的価値の面でも注目される。
 大学に目を向けると、東京大学消費生活協同組合(東大生協)の事例が挙げられる。学内食堂や購買において電子マネーやアプリ型決済を積極的に導入しており、スマートフォンで残高確認やチャージ、利用履歴の管理が可能である。これにより、食事時間帯のレジ混雑が緩和されるとともに、現金管理の負担軽減や運営の効率化が進んでいる。飲料や弁当販売といった小規模購買にもキャッシュレス化が広がり、学生の利便性向上と持続可能な運営の両立を実現している。こうした大学での先行事例は、中学・高校への展開を後押しするモデルともなっている。

学校生活の質を高めるインフラ~価格・栄養・空間で魅力アップ~

 一方、メニューや運営面での工夫によって、学食の価値を高める事例もある。東京都市大学付属中学校・高等学校では、昨年4月からワンコイン定食を導入し、カフェテリア方式で運営している。栄養バランスに配慮した「一汁三菜」を基本とし、価格帯を抑えつつ、日常的に利用しやすい学食を実現している。
 湘南学園では、地域生産者の食材を積極的に取り入れ、食育と地域連携を重視したカフェテリアを展開している。保護者や地域住民にも開放する時間帯を設けるなど、学食を学校と地域をつなぐ拠点として位置付けている点が特徴である。小学校児童向けの弁当提供や、幼稚園への配食など、多様なニーズに応える取り組みも進めている。
 また、三浦学苑高校では、48年ぶりとなる校内食堂「ミウラズ・キッチン」を企業委託により新設した。屋上テラス席を備えた開放的な空間とし、生徒だけでなく保護者も利用可能とすることで、「行きたくなる学校づくり」を施設面から支えている。
 これらの事例に共通するのは、学食を単なる食事提供の場としてではなく、学校生活の質を高めるインフラとして再定義している点である。無人決済やモバイル注文、キャッシュレス化は、利便性向上にとどまらず、混雑緩和や運営効率化にも寄与する。
 今後、学校施設のあり方を考える上で、学食は「教育環境の一部」として、ますます重要な位置を占めていくことになるだろう。

施設特集

連載