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逃げ続けたら世界一周していました

19面記事

書評

白石 あづさ 著
息苦しい日常離れ出会った人々

 「旅は道連れ世は情け」と言われるが、旅をする中では、さまざまな人との出会いや出来事との遭遇がある。
 タイトルにあるように、著者は20代だった頃に、中国やインド、中東、アフリカ、アメリカ、中南米など世界各国を3年もの間、一人旅をした。本書の前半では、旅の途中で出会った人たちとの人間味あふれる交流の様子が、「エーッ」と驚くようなエピソードとともに紹介されている。「旅人には親切にする」というイスラム教の教えの下に見ず知らずの著者に優しく接する人々。「働かなくてもいい日は働かない」と、心豊かに生きる人々。そんな出会いは、他人行儀で働き詰めの日本人の生き方を問い直すきっかけとなる。
 本書の後半では、著者の生い立ちが語られている。子どもの頃から、人に合わせて集団行動することが苦手だった著者は、小学校6年間で千冊もの本を図書館で読んでいたという。そして、高校生ではワンダーフォーゲル部に入り、山登りをするようになった。日常生活が息苦しくなったときに、一人で夜行列車に乗って知らない土地を旅したり、山登りをしたりしていたという。著者が、「夜逃げ旅」と呼んでいるそうした旅は、心の疲れを癒やすものであった。「苦しくなったら我慢しないで逃げなさい。日頃から、貯金をして準備しておきなさい」。このメッセージが、心に響く。
(1034円 岩波書店(岩波ジュニア新書))
(都筑 学・中央大学名誉教授)

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