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「大阪万博」と「無償化」で充実の修学旅行 東京都葛飾区立青戸中学校

10面記事

企画特集

新幹線に乗車し出発する生徒たち

 東京都葛飾区では2025年度より、区立小中学校の修学旅行費および移動教室費等の完全無償化を実施している。区内有数の大規模校である葛飾区立青戸中学校(沢田秀夫校長、生徒数537)では、9月に修学旅行を実施。公費負担制度下で工夫を凝らし、「大阪・関西万博」を中心に、京都・奈良での班別行動も実現するなど、充実した教育旅行を成功させた。初年度ならではの対応について沢田校長に聞いた。

葛飾区立青戸中学校 沢田秀夫校長

「万博」を組み込んだ特別行程

 同校の今年度の修学旅行は185名が参加。「大阪・関西万博」を組み込み、奈良・大阪・京都を巡る2泊3日の行程で実施した。 初日に奈良での班別行動、2日目に万博会場、3日目に京都市内観光という構成だ。
 万博に関してはSDGsや環境学習の一環として位置づけた。総合的な学習の時間での事前学習を重ね、グループ別にテーマや見学のポイントを絞り込んでから訪問した。混雑のため予定したパビリオンをすべて回ることは難しかったが、生徒たちは会場の雰囲気を味わうことは十分にできた。
 無償化初年度に今年ならではの特別行程が組まれたことに、生徒だけでなく、保護者からも「家庭ではなかなか行けないためありがたい」といった喜びの声が上がったという。

大阪・関西万博会場で

無償化で変わった運営
 
 今年度の最大の変化は、区の方針による修学旅行費用の完全無償化だ。生徒1人あたり8万円の補助により、経済的理由で不参加となる生徒がいなくなり、キャンセル料も公費でカバーされることになった。事前に保護者が積み立てていたお金はすべて返金。保護者の安心感は劇的に向上した。
 一方、学校運営の視点では、保護者が出す私費から、公費への転換に伴う対応が求められた。青戸中学校では旅行会社と連携しながら会計管理や行程の工夫を試みた。

昼食代や班行動の工夫

 一つは昼食代の一括精算だ。これまで、班別行動中の昼食代は、生徒が自分たちで選んだ店に入り、小遣いの中から現金で支払いを済ませていた。しかし、公費を使用する場合、原則として領収書が必要となる。生徒全員の個別精算は実務上不可能に近い。
 そこで、同校では旅行会社と連携し、班行動中の食事場所をあらかじめ指定した飲食店に限定し、時間をずらして利用させる方式を採用した。これにより、旅行会社が一括で支払うことが可能となり、煩雑な個人の現金精算を回避することができた。

オーバーツーリズム対策と安全確保

 もう一つは、京都観光でのオーバーツーリズム対策だ。観光客の増加により路線バスに乗車できず、丸一日かけても十分な見学ができないのが課題だった。タクシー利用は確実だが高額でもある。
 そこで今回は観光時間を最終日の半日に短縮することにした。これによりタクシーを貸し切り、どの班も効率よく金閣寺や清水寺などを回ることができた。
 タクシー利用中は各班に1台スマートフォンを持たせ、教員が待機するチェックポイントを通過できない場合や、予定を変更する場合などは電話で教員と連絡を取り合う体制を整え、安全面にも配慮した。

安心と学び、生きる力の両立

 こうして、1人8万円の予算内で安全と学びの両立を実現し、修学旅行本来の教育的意義を十分に果たす公費化への移行が実現した。
 沢田校長は公費負担化への移行に伴い、調整が必要な局面はあったものの、教育の機会均等の観点から今回の修学旅行無償化を高く評価している。また、変動要素の大きな班行動費などの管理については、さらなる工夫の余地もあると見ている。
 コロナ禍を経て、生徒同士の対面コミュニケーションや共同生活の機会が減少する中、「修学旅行が持つ人間関係形成の場としての意義は以前にも増して大きい。生徒の多彩な生きる力を引き出す重要な機会になっている」と、沢田校長は語る。
 修学旅行の無償化という新たな恩恵を活かしつつ、現場の事務負担軽減と教育効果をいかに両立させるか。同校の事例は、無償化を検討する自治体や学校現場への有益なヒントとなるだろう。

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