「いじめ防止対策」から学校をつくりなおす 「調査」は対話のはじまり
14面記事
鈴木 庸裕・住友 剛 編著
公教育に必要な条件整備訴え
いじめ重大事態件数が増加している。懸念されるのは、法の趣旨とは逆に加害者への「報復」として、重大事態の申告が行われているケースだ。評者の関係する自治体でも同様で、その後、訴訟に発展する場合もあり、まるで訴訟資料作りのために重大事態調査が実施されているかのようだ。
本書は、こうした混乱を踏まえ、関係者の対話を促し、支援に携わる人々を支える仕組みづくりの契機となることを目指している。第1部で「いじめ防止対策推進法」制定以降の取り組みに対する著者の疑問や問題意識を提示し、第2部では教職員、弁護士、SSWなど多様な立場の悩みや葛藤を取り上げる。第3部では制度・政策面の課題や先行事例を整理し、第4部で全体の議論を総括しつつ問題提起を行う構成。
文中に「いじめという事態を前にして、誰が何をすればいいのか途方に暮れているという現実」「法令やガイドラインをいくら詳細にしたとしても、学校現場や学校設置者としてはそれをどのように扱って、目の前で生じている事態に対応していいのか、という課題」を指摘する記述がある。
現在の混乱から抜け出すために、著者の訴える「公教育に必要な条件整備と子どもたちの自立支援」や「いじめを生む環境とそのケア」を踏まえた法整備が望まれる。特に自治体の関係者や学校管理職に読んでほしい一冊だ。
(2090円 かもがわ出版)
(中村 豊・前公益社団法人日本教育会事務局長)

