自己との対話を深める「対話」
14面記事
諸富 祥彦 著
カウンセリング手法で思考力培う
「主体的・対話的で深い学び」という文言が広く知られているが、「深い学び」は結実しているだろうか。本書は、その「対話」について、カウンセリングの視座から深く、学術的かつ実践的に掘り下げた論考である。
「真の対話であるならば、その対話の過程において、対話参加者個々の内的過程(中略)は、より深化しないではいられない」「『対話する』とは、そんな『変化の渦』の中に自分を投げ入れる、ということである」とある。「特に教育関係者にとって大事な点なので、繰り返しておく」として「相手を変えよう、相手に影響を与えよう、などという意図をもつと、それは対話にはなりえない」と断じ、「傾聴」の本質は「相手に『なりきる』」ことだとし、「傾聴」のレベルを「浅い、一般、深い」の3段階とする。第3の「深い傾聴」をさらに3段階に分け、最高の傾聴は相手の「内側に深く入ってなりきり、映し出す傾聴」である、と説く。これを「EAMA的傾聴」と呼び、著者は目下その研究、実践、深化に最も力を注いでいると述べている。
これらの考えに基づく「自己との対話」を深める道徳授業の具体的事例は、終章の第4章で紹介されている。その中に「そもそも、深い思考の最大の特徴は、『沈黙』である」という一文があり「口を閉ざして思い始まる」という私の大好きな格言を思い出し深くうなずいたことである。
(1980円 図書文化社)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)

