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地域の実情・災害リスクに応じた学校施設の改修事例

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現在も仮設住宅暮らしが続く、令和6年能登半島地震の被災地

 近年、学校が大規模な自然災害に見舞われることが頻発している。特に令和6年能登半島地震では、地域ごとの地理的条件によって被害の大きさや復旧の進み方が大きく異なることが改めて浮き彫りになった。こうした教訓を踏まえ、学校周辺の災害リスクを災害種別に把握し、その緊急度に応じた施設整備を進める重要性が高まっている。ここでは、地域の実情に応じて防災機能を強化した学校施設の改修事例を紹介する。

河川氾濫に備え、屋内運動場を2階に整備

 荒川・利根川の氾濫により長期間の浸水が想定される足立区立綾瀬小学校では、2022年に屋内運動場を改築し、防災機能を大幅に向上させた。
 改築後の屋内運動場は、想定最大浸水深4・5mでも利用できるよう2階に配置。避難所としての活用を見据え、非常時でも稼働可能な冷暖房設備や、隣接する備蓄倉庫を整備した。
 また、各階に車いす対応のバリアフリートイレを設置し、1階にはオストメイト対応設備やユニバーサルシート、ベビーチェアを備えるなど、誰もが使いやすい環境づくりを進めている。
 浸水時にも機能を維持できるよう、受変電設備やプロパンガスを屋上に設置。屋内運動場のガス式冷暖房は、都市ガスが途絶えてもプロパンガスに切り替えて稼働できる。
 さらに、水害だけでなく地震時の避難所としても活用できるよう、マンホールトイレや少量の水で洗浄できる災害用タンク式トイレ、かまどとして利用可能なベンチなども導入した。
 これらの設備を確実に活用するため、平時から区職員や学校関係者が防災訓練を通じて地域住民へ使用方法を周知している。

津波避難を見据えた高所への避難場所確保

 南海トラフ地震による津波被害が想定される紀伊半島の和歌山市立伏虎義務教育学校では、後期課程用の屋内運動場を校舎3階に整備している。
 津波警報発令時には、地域住民が指定緊急避難場所である3階以上へ避難する計画で、教職員・市職員・避難所緊急開放協力員が連携して誘導を行う。施設開錠用の鍵も預託し、迅速な避難を可能にしている。
 備蓄品は屋内運動場に集約し、飲料水、乾パン、アルファ化米、感染症対策物品、避難所運営用品などを確保。飲料水については、災害時に速やかに給水所を開設できるよう、直圧で水を供給できる応急給水栓を整備している。
 エネルギー確保の面では、停電時に稼働する自家発電設備を設置し、軽油700リットルで約10時間の連続運転が可能。空調は都市ガス方式を採用し、エネルギー源を分散させることで災害時のリスク低減を図っている。

老朽化改修を機に総合的な防災機能を強化

 川崎市立菅生小学校では、老朽化した校舎の改修(2020年)に合わせて防災機能を総合的に強化した。
 発災後の児童生徒の安否確認や情報収集を迅速に行えるよう、管理諸室をA棟1階に集約。屋内運動場には備蓄倉庫を増築し、家庭科室などの特別教室を隣接させることで、初動対応やライフライン確保を意識した配置とした。
 屋内運動場の改修では、断熱化(屋根・外壁・床、窓のペアガラス化)、照明・換気設備の改善、無線LAN整備、再生可能エネルギーの活用、灯油式自家発電設備の導入など、多面的な防災機能の向上を図っている。
 文科省は、防災機能を強化した学校施設の事例を公開するとともに、学校設置者が施設や設備の整備・改修を行う際に活用できるチェックリストを作成している。このチェックリストでは、①学校周辺に存在する災害種ごとのリスク②学校施設の脆弱性と必要な対策③避難所として求められる防災機能の3点を総合的に確認できるようになっており、文科省は各設置者に対して積極的な活用を求めている。

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