地域発 学生が主役の地方創生 eラーニング講座を地方創生の学びと進路に生かし未来へ提言
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小樽商科大学、北海学園大学の学生が参加した成果報告会
東京一極集中とそれに伴う地域経済の衰退が進むなか、地方創生に携わる人材の育成が緊急性を帯びた課題になっている。そうした背景を受け、高校生、大学生が地域を盛り上げるアイデアを通じて、地方創生を「ジブンゴト」として考えようとする試みが急速に広がる。今年度は国立大学法人北海道国立大学機構小樽商科大学(小樽市)、北海学園大学(札幌市)の学生が、内閣府が推進するeラーニング講座「地方創生カレッジ」の自発的な活用で得た知識をベースに、自治体関係者に独創的なプロジェクトを提案した。また、北海道札幌工業高校(札幌市)では「地方創生版 学問カルタ」を活用し、高校生が自らの進路を地方創生にリンクさせて考える取り組みもあった。地方創生を自らの学びに生かす大学生、高校生の動きを追った。
事例1 大学生の学び
地方創生カレッジでの学びをベースに現地学習
小樽商科大学、北海学園大学
「学生が主役の地方創生プロジェクト」と名付けられた大学生対象の取り組みは、2022年度から静岡や秋田、長野、東京、北海道の各都道県で実施されている。地方創生カレッジが提供する、200を超えるeラーニング講座で地方創生の具体策を導き出すための基礎知識を学んだうえで、地域でのワークショップに臨み、人的交流やイベント開催を経て、最終的には首長ら自治体関係者に地域活性化のアイデアを披露してきた。
小樽商科大学商学部では2008年以降、大津晶教授が担当する「社会連携実践」の授業の一環で、履修する1、2年次の学生が、小樽市などで観光業や商業、社会福祉まで幅広い地域課題解決に取り組んできた。昨年度からは地方創生カレッジを活用。一方、北海学園大学経済学部も西村宣彦教授が担当する「地域研修」の履修を通じ、十勝や島しょ部で継続して活動を重ねてきた実績があり、今年度から事前学習に地方創生カレッジを採用した。
両大学の学生は、夏から秋にかけてフィールドワークを実施し、プロジェクトの成案作成に取り組んだ。1月16日に札幌市の小樽商科大学札幌サテライトで開かれた成果報告会には両大学の学生約50人と関係自治体の関係者が参加し、オンラインでも同時配信された。
北海学園大学経済学部の学生は今年度、天売島(羽幌町)や積丹町、帯広市のグループに分かれて、フィールドワークに取り組んだ。帯広市で活動したグループは、「食を通じた“つながり”の再生」をテーマに、中心市街地で8月に街おこしイベントを開催、地域食堂の運営や野菜販売、野菜の搾り汁を使った染め物体験に2日間で650人を集めた。報告会では「食や農業をテーマにしたイベントが、生産者と消費者の交流を促し、中心市街地の賑わいを生む」と訴えた。
地域経済学科の佐藤慶太さん(3年)は「同じ十勝地域で昨年度活動した経験も活かしながら、地域間のつながりを強くするにはどうしたらいいか、模索しながら地域の人に接することができた。地域課題の解決にまったくゼロの状態から関わり、多くの人の意見を聞きながらイベントを開いたことは、今後社会人として問題解決に取り組むうえで役に立つと思う」と話した。地方創生カレッジのeラーニング講座については「自分では言語化できなかったことが整理されていて、現地で発見した課題の理解に役立ちました」と語った。
一方、小樽商科大学商学部からは、地域活性化サークル「O-ASOBI」など8人のグループが「黒松内地域活性化プロジェクト」を披露した。黒松内町は国の天然記念物「歌才ブナ林」を擁する日本最北のブナ自生地。学生たちは後志地域と道南地域を結ぶ交通の要衝という立地を活用した「日本屈指のプレミアム車中泊の街」、豊かなブナ林が清らかな地下水を生むことに着目した「黒松内 水ソムリエ検定の創設」などのアイデアを提言した。
泉萌衣さん(1年)は「大学で受動的に学ぶのは誰でもできることかもしれない。だけど実際に自分たちで足を運んで、身をもって理論を体感するということはなかなかできない。地方創生カレッジで学んだ知識は理論としてうまく言語化されていて、実際の地域の人との交流のなかで生きた」と話した。泉さんは道北の豊富町出身で、卒業後の進路についても、「このままだと自分の地域が消えてしまうかもしれない。地域活性化のために頑張っている生き生きした人に出会えたので、進路を考えるうえで刺激的な体験でした」と振り返った。
指導した大津晶教授は、地方創生カレッジについて「昨年度はオンラインの学習と地域での学び体験をどう組み合わせるか、に狙いを置き、成果を感じていましたが、今年度は別の可能性も感じました。オンライン教材をプラットフォームにして、経済、経営、社会学など専門性の違う学生が大学や担当する地域の枠を越えてネットワーキングする効果もある。地域に出て行って学ぶ上で何が求められるか、マインドセット(思考・行動パターン)のようなものを学生たちが準備する効果があると感じました」と実感していた。
事例2 高校生の学び
「学問カルタ」を通じて地方創生人材を育成
北海道札幌工業高校

「学問カルタ 地方創生版」を体験する生徒たち
地方創生は大学進学や就職など進路選択を控えた高校世代のキャリア教育においても、重要なツールになりつつある。学問の本質や、学問の特徴や違いを示しながら、関心があるテーマから自らが将来学びたい学問をマッチングさせる教材として注目を集めているのが、産業能率大学の藤岡慎二教授らが開発した「学問カルタ 地方創生版」だ。
解決したい地域課題に対して、どの学問を利用すれば問題解決につながるかを示したツールで、例えば『AIを用いて人口減少に関係する要素を見つけるには』(正解は情報科学)、『地域特有の酵母菌を活用した地ビールを生産するには(生命工学)というように、進学、就職など将来の進路選択が間近に迫っている高校生向けに、ゲーム感覚で学部や専攻選びをアシストする工夫がされている。
昨年度は県立隠岐島前高校(島根)、北海道大空高校(北海道)など全国4校で実施され、今年度はその取り組みがさらに広がっている。
1月に北海道札幌工業高校(札幌市)で行われた授業には、機械科、建築科の生徒約60人が大教室に集まった。2、3人のグループごとに52の地域課題が示されたボードを配布し、それぞれの課題解決にふさわしい学問が記されたカードをカルタのように重ね合わせていく。友人たちとの意見交換も楽しみながら、それぞれの学問の内容や目的を視覚的に理解できる仕組みになっている。授業の後半には、藤岡教授が分類の難しい「経済学」「経営学」「商学」や、「歴史学」「考古学」「民俗学」の違いを分かりやすく解説した。最後に生徒おのおのが興味を持った学問を太いペンで大きく紙に書き、掲げてみせた。
授業の最後には、高校世代から地域課題に関心を持ち、将来の進路決定につなげてもらう観点から「地方創生カレッジ」の活用も訴え、生徒らはスマートフォンでQRコードを読み取り、実際にカレッジの利用登録までを体験した。
将来学びたい学問について「歴史学」を挙げた機械科の荒川蒼さん(1年)は「第二次世界大戦など近・現代史に関心があります。稚内市の出身で観光では宗谷岬が有名ですが、サハリンに近いこともあり近現代史に関する史跡も多くある。将来は故郷に帰って地域づくりに関係ある仕事に就きたいと考えています。地方創生カレッジでは地域の歴史をもとに、街づくりにつなげるようなカリキュラムに関心があります」と話した。
「音楽」に関心があると答えた建築科、河野秀汰さん(1年)は「地域づくりとエンタメを結びづける試みに関心があります。私は札幌の出身ですが、例えば地域の観光大使に地域課題を理解してもらって、楽曲を通じて課題解決に尽力してもらう仕組みを作ってみたい。例えば、雪道をお年寄りや子供に安心して歩いてもらうために、課題の周知や問題解決につながるツールとして音楽をどう活用できるのか。地方創生カレッジでふさわしいカリキュラムを探してみたい」と話した。
同校の諸橋宏明校長は「現在、高校でおのおのが取り組んでいる学習がどんな学問にかかわっているかを知れば、現在の学びに広がりが生まれていく。学問カルタや地方創生カレッジがその入り口、扉になれば、学習の深みにもつながるのではないか」と期待した。
学生が学んだ「地方創生カレッジ」とは
今回取材した高校生、大学生の学びのベースになっているプラットフォームが地方創生の本格的な事業展開に必要な人材を育成・確保するために創設された「地方創生カレッジ」だ。eラーニングなど地方創生を進めていくうえで役立つスキルや全国の優れた事例を学べるコンテンツを擁し、地方創生を実践し結果を残した先人と学生たちが相互に交流できるメリットがある。
第一線で活躍する専門家が講師を務めるeラーニング講座の受講者は全国で累計44,671万人(今年2月現在)。受講は無料で、講座は「脱炭素」「SDGs(持続可能な発展目標)」「デジタル」など200を超え、現代社会で注目を集めるさまざまなテーマを取り扱う。
高校生や大学生にとっては、日ごろの学習活動や将来目指すキャリアを確認する場となるとともに、地域をよくするアイデアを生み出す手助けにもなる。本記事で取り上げたプロジェクトの動画も公開中。地方創生カレッジの詳細はホームページ(https://chihousousei-college.jp/)で。
「地方創生カレッジ」受講方法
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