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令和4年 通常国会質疑から【第8回】

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行財政

 6月に閉会した通常国会では、予算案・法案審議の他にどのような質疑があったか。衆議院文部科学委員会、参議院文教科学委員会などでは、まだ、あまり明らかになっていない政府の考え方などが見えてくる。6月3日の衆議院文部科学委員会では、いじめ問題について文科省と、こども家庭庁の役割について政府の考え方が明らかになっている。

いじめ問題の責任者は文科相か

笠浩史議員 来年四月からこども家庭庁が発足をして、そして文科省とも協力をしながらこのいじめ問題に当たっていくということですけれども、まず確認ですけれども、いじめ問題の、こども家庭庁が発足をしても、責任者は文部科学大臣ということでいいのか。そして、いじめ防止対策推進法の第十一条のいじめ防止等のための基本方針は文部科学大臣が責任を持って定めるということで変わらないということでよろしいでしょうか。

こども家庭庁は首長部局に働きかけ

文科相 いじめは主に学校で生じるものでありますから、いじめへの対応、解消に当たりましては、引き続き文部科学省が責任を持って教育委員会や学校に指導助言を行いまして、この事案の解決につないでいくことが重要という認識でございます。
 ただし、SNSによりまして、いじめなどを発見しにくい場合や、いじめの背景に家庭が要因となっている場合、教育委員会や学校のみで根本的な解決を図ることが難しいときがございます。社会の事情が変わってくるということがありまして、どういうスタイルでの、形式のこういったいじめの形があるのかということは、気がつかないときが出てくるかもしれません。そういうときには、幅広い角度からのいろいろな意見も求めなきゃならぬと思っておるものでございます。
 こうしたことで、学校における組織的な対応はもとより、学校とか教育委員会が、福祉部局であります児童相談所などの外部の関係機関とより連携をしまして、それぞれのノウハウを発揮していくことが必要と思います。
 今後、こども家庭庁の創設を契機としまして、いじめ対策における外部の関係機関との連携を強化する観点では、文部科学省からは教育委員会、学校に、司令塔機能を持ちますこども家庭庁からは首長部局にそれぞれ働きかけを行いまして、現場レベルの連携の強化を図るとともに、いじめ未然防止に向けました取組の更なる強化や、学校のいじめ対応の改善、教育相談体制の整備等の施策にしっかり取り組んでいきたいと思います。
 何度も申し上げますけれども、いじめは主に学校で生じることから、責任を持って対処してまいりたいと思います。

こども家庭庁が勧告する状況とは

笠議員 学校内で起きた、ただ、重大事態の対応については、こども家庭庁もこれは関与をしていくという中で、こども家庭庁の担当大臣は、この重大事態への対応で文部科学大臣に勧告できる権限があるわけですけれども、具体的にどういう状況になったときにこども家庭庁の担当大臣が文科大臣に勧告をすることが想定されているのかをお答えいただきたいと思います。

文科省の対応が不適切なら

内閣官房こども家庭庁設置法案等準備室審議官 まず、いじめ防止等の対策につきましては、いじめ防止対策推進法等に基づきまして、主として学校や教育委員会、文部科学省による取り組みが進められている一方で、こども家庭庁におきましても、子供の権利利益の擁護等を担う観点から、子供のいじめ防止等の対策を担うこととしてございます。
 その上で、御質問の重大事態に関する勧告権についてでございます。
 こども家庭庁を担当する内閣府の特命担当大臣は、政府部内の統一を図るため、必要と認めるときには、関係行政機関の長に対して勧告をする権限を持ちます。
 これはあくまでも仮定の話ではございますけれども、例えば、いじめの重大事態への対応に関しまして、いじめ防止対策推進法第三十三条に基づき、文部科学大臣が都道府県、市町村に対し、事務の適正な処理を図るための必要な指導、助言、援助を適切に行っていないと考えられるような場合には、こども家庭庁を担当する内閣府特命担当大臣が文部科学大臣に対して、必要な対応を行うよう勧告をするといったようなことが考えられるのではないかというふうに認識をしてございます。

こども家庭庁が介入組織を

笠議員 こども家庭庁が今度できるわけですけれども、非常に教職員の方々も、保護者との話合いが難航をしたとき、解決できているケースもたくさんあると思うんですよね、ただ、やはり立場が異なって関係がこじれたときに、多くの方々が、中立の第三者機関が介入して解決に協力をしてほしいという、この調査でも九六%の人たちがそういうふうに回答されているわけですけれども、やはり、一度関係がこじれてしまうと、なかなか当事者間での解決というのは難しい状況になってくると思います。
 ですから、こども家庭庁の方で、そういった中立の立場で介入ができる、あるいはいろいろな支援ができる、そういう相談窓口にもなるような第三者機関というものの設置を、本当は、子供コミッショナーみたいな組織があって、その下で展開をしていく方がベストなのかもしれませんけれども、今回は子供コミッショナーというものは盛り込まれておりませんけれども、そういった機関を、むしろやはりいろいろな方々に、NPO等々にも協力をしていただきながら、こども家庭庁の方で展開をしていくというような方針はあるのかどうか、伺いたいと思います。

好事例の展開促す

内閣官房こども家庭庁設置法案等準備室審議官 昨年の十二月に閣議決定をいたしましたこども政策の新たな推進体制に関する基本方針におきましては、こども家庭庁が子供の権利利益の擁護等を担う観点からいじめの防止を担い、地方自治体における相談の体制などの体制整備を推進するということとされたところでございます。
 いじめが発生している現場においてその解消が図られるためには、言うまでもなく、学校や教育委員会がいじめ防止対策推進法に基づく役割をしっかり果たすということは大変大事なことではございますけれども、それは当然のこととして、首長部局や警察、あるいは法務局や児童相談所といった関係機関でありますとかNPOなどの団体が連携をし、それぞれの強みを生かした関わりをこうした問題に対して行うということは、これまた重要なことであるというふうに考えております。
 こども家庭庁におきましては、こうしたネットワークの構築を含めまして、地域における体制の強化を図ってまいりたいと考えております。
各自治体における様々な先進的な取組というものがあろうというふうに承知してございます。中には、首長部局に、いじめ問題に対する監察といいますか、調査と対処を行うような部局を設けているような自治体もあるというふうに聞いてございまして、現在、内閣官房におきまして、各自治体における取組状況について調査を行っておりますので、今後、そうした調査から得られたものについてしっかりと整理をし、各自治体に対して、好事例の展開などを通じたしっかりとした検討を促してまいりたいというふうに考えております。

令和4年 通常国会質疑から