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エネルギー問題をどう考える?教科間連携で育む主体的・対話的で深い学びの実現【第8回】

7面記事

企画特集

企画・制作=日本教育新聞社
協力=原子力発電環境整備機構

仙台エネルギー環境教育推進研究会「総合学習」を軸にした6年間のカリキュラムを体系化

 エネルギー・環境問題は未来を生きるための切実なテーマの一つ。子どもたちが、この問題を「自分ごと」として認識し、考える力を伸ばすには、教員側がエネルギー環境教育に関心を持ち、その輪を次世代につなげることがカギとなる。仙台エネルギー環境教育推進研究会(永井一也会長)は、総合的な学習の時間(総合学習)を軸に、小学校6年間の体系的なカリキュラム開発を完成させている。総合学習ならではのダイナミックな活動が持ち味だ。

 仙台市を中心に活動する仙台エネルギー環境教育推進研究会は、カリキュラム・マネジメントや言語活動、現代的諸課題への対応、主体的・対話的で深い学びなど、現行の学習指導要領で求められる教育課程の理念をエネルギー環境教育の取り組みによって実現することを目指す。永井一也会長(前・仙台市立南小泉小学校長)は、2000年代から赴任した5つの小学校でエネルギー環境教育に取り組んできた。
 各校の有志やエネルギー環境教育に関心のある教員、大学教員など約20名が集まり組織したのが同研究会だ。定期的な研究会の開催、地熱発電所や原子力発電所などの施設見学、専門家を招いた講演会など情報交換や相互連携を深めている。


永井 一也 会長

教材開発に5つの視点
 同研究会の特徴は、生活科および総合学習を軸とした、小学校6年間の体系的なエネルギー環境教育のカリキュラムを構築した点にある。体系化するにあたり教材開発のための5つの視点を定めている。

 (1) 身のまわりにあるエネルギー(風・水・太陽・光電池発電、資源エネルギー等)
 (2) 私たちの生活とエネルギー(電気の利用・動力源・電気製品の利用・資源・エネルギー資源等)
 (3) 限りあるエネルギー(有限なエネルギー資源・エネルギー自給率・発電方法のメリットとデメリット等)
 (4) エネルギーと環境問題(環境問題・地球温暖化・地層処分等)
 (5) 大切にしなければならないエネルギー(省エネルギー・エネルギーの持続的利用等)

 6年間のカリキュラムはこの視点に基づき発達段階に合わせた学習や活動で構成される。例えば(1) 身のまわりにあるエネルギーでは、低学年で風や水がものを動かす力があることを風車づくりや水遊びを通して学ぶ。中学年では、薪や炭が燃料になること、高学年では水力・風力・火力・原子力・太陽光など、さまざまな電源を組み合わせること(エネルギーミックス)で安定した電力が得られることを学ぶ、といった形だ。

エネルギー環境教育の狙いは「総合学習」と一致

 「各教科においてエネルギー教育に直結する内容は、総合学習を軸にして、各教科を連携させるクロスカリキュラムの視点を持つことが重要」と永井会長は指摘する。エネルギー教育の狙いである、持続可能な社会の構築を目指し、エネルギー・環境問題の解決に向き合うことで、生涯を通じて主体的かつ適切に判断・行動できる人間を育成することは、総合学習の狙いに合致するからだ。
 各教科でエネルギー環境教育に関連する内容はあるものの、それはエネルギー環境教育のことを考えて作られたものではない。単純につなぎ合わせるだけでは、各教科の狙いも、エネルギー環境教育の狙いも中途半端に終わってしまうと危惧する。総合学習で扱うのが最も自然で、キャリア教育やESD教育とも融合させた幅広い実践が可能だとする。
 4年生の総合「電気はどこから」では、子どもたちが家庭や学校のコンセントから電線を伝い、変電所、さらに発電所をたどっていく。教科では4年生社会科の「住みよいくらしをつくる」(東書)の中から電気を選択し、校外学習や施設見学など、総合学習ならではのダイナミックさが子どもたちの興味・関心を引き出す。
 6年生では「これからのエネルギーについて考えよう」と題し、未来の町づくりへと発展させるエネルギー環境教育の仕上げの活動を展開する。各発電方法のメリットやデメリットを整理したうえで、中央給電指令所や水力発電所を見学したり、原子力発電や高レベル放射性廃棄物の処分方法、エネルギーミックスについても考える。各学年で積み上げてきた学びを活用して、地層処分やエネルギーミックスについて自分なりの考えを持たせることができた。
 答えを出すのが難しい問いに向き合い、知識を活用して真剣に考え、表現することを通して自己肯定感も育まれる。また、専門的な知識は原子力発電環境整備機構(NUMO)などの外部講師と連携し、教員も児童と一緒に学ぶ姿を見せることもキャリア教育になる。「エネルギー環境教育を通して児童は自分の意見に自信をもって発言できるようになる。将来、未知の問題に対しても科学的な根拠に基づき判断し、社会に積極的に参画する態度につながることを期待したい」と永井会長は思いを込める。
 今後予定しているのは、中学校へのエネルギー環境教育の展開だ。小学校6年間の体系的なカリキュラム開発の経験をもとに、トライアル校で中学3年間のエネルギー環境教育の体系化を目指す。


女川原子力発電所ほか施設見学を多く行い、知見を深める

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エネルギー問題をどう考える?教科間連携で育む主体的・対話的で深い学びの実現