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校長塾 経営力を高める最重要ポイント【第540回】

4面記事

管理職・学校経営

堀越 勉 千代田区立麹町中学校校長
象徴的な「単元テスト」を改善する
「アンタッチャブル」とひるまずメスを

 一校を預かる校長として、改善が許されない領域など一切ない。課題があるなら直ちに改善策を講じるのが校長の使命だ。
 昨年4月の校内運営委員会で、私は「『単元テスト』の名称はおかしくない? 本来は『単元・題材テスト』では?」と投げ掛けた。単元と題材の二つの考え方の教科がある。教員からは「題材」について、「5教科以外は楽しい授業をすればよい。テストは要らないと伝え聞いています」という発言があった。一瞬、思考が停止した。学習指導要領の目標やその達成状況を測る「評価」に係る大問題が内在している。長きにわたるこのような伝承や、メディアによる「定期テスト廃止論(単元テスト)」の独り歩きが、教員の改善意欲を低下させてきたと感じた。
 その後、教員からは「議論していいのですか」「怒られませんか」という質問もあった。何におびえているのだろうか。メディアの影響を受け、教員にとってはアンタッチャブルな施策となり、学校経営に深い影を落としてきたのだと気付いた。
 本校の単元テストは二つの大きな問題点を抱えている。

 (1)最大で25分間のテストであるため、50分のテストに対応できる体力と精神力が育たない
 テストは主にモジュールの時間に行うため最大25分となり、体内時計が形成されてしまっていた。そこで50分の実力テストで実態を観察すると、25分以降に寝てしまう生徒が急増するデータが表れた。入試でも寝てしまい不合格という例もある。
 (2)再テストの作問ができず、問題と解答が出回ってしまう

 「間違ったところが大切」の理念の下、テストを何度でも受けられ、再テストで点数が上がれば評価が上がる。再テスト用に問題を作り直せればよいが、著作権を含め容易ではない。そのうち、生徒の間でSNS上に問題と解答が出回るようになった。本番テストで手を抜き、再テストで答えを書き写す悪習慣が生まれ、学力も低下した。
 こうした現状を改善するべく、テストの在り方にメスを入れた。昨年度の1学期から再テストを廃止し、3学期から50分間のテスト週間を導入した。この結果、計画的にテスト準備をする生徒が増加した。また、これまで単元テストを意図的に欠席していた生徒の65%がテストに挑戦する変化を見せ、モチベーションが高まり始めた。
 ひるむことなく改善策を講じていくことで、子どもたちが救われる可能性が高まるのだ。

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