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現場発!ソーシャル・インクルージョンとインクルーシブ教育

17面記事

書評

インクルーシブ発想の教育シリーズ(3)
高原 浩 著
障害児者の成長を促す支援

 「インクルーシブ発想の教育シリーズ」の第3弾で、同シリーズ編集代表は青山新吾・ノートルダム清心女子大学准教授(同大特別支援教育研究センター長)。
 本書の著者・高原浩さんは、同じ出版社から「特別支援教育ONEテーマブック 現場発! 知的・発達障害者の就労自立支援」を刊行している。入所施設などで支援体験を積みながら、障害児者との向き合い方、支援の在り方について発信してきた。
 今回は、その著者の子ども時代から、施設での支援体験などを「僕とインクルーシブ」(第1章)で語り、現状での支援が「インクルーシブ障害」(第2章)を生む側面を指摘する。第3章に編集代表との対談を収めて、インクルーシブの現況について総括している。
 施設の中で、支援のプロたちでも対応しにくい障害者に向き合い、成長する様が活写されるのは感動的だ。それは例えば、障害を固定的に捉え障害は「個性」とは言わずに、個の違いはあるものの、潜在能力を肯定し、成長する人と捉える障害児者観や、その時の指導が10年後の姿とどうつながっているかと問い直せる支援観が根底にあるためだ。
 学校や施設を単なる通過点にせず、著者のように、その存在をかけて同行する姿を、全ての支援者に求めるのは困難かもしれない。だが、障害児者と共に生きるインクルーシブの本当の意味を問い掛けてくれる。
(1980円 学事出版)
(矢)

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