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なぜあの学校は危機対応を間違えたのか

16面記事

書評

被害を最小限に抑え信頼を守るクライシスコミュニケーション
石川 慶子 著
初動3原則と平時の訓練を提言

 クライシスコミュニケーションとは、著者によれば「危機(クライシス)発生時に説明責任を果たすことで信頼失墜を防ぐ活動」となる。いじめ問題をはじめ、現在の学校には、さまざまな危機が発生する。このときの対応(記者会見も含む)について、具体的に論じた本が本書である。学校管理職や教育委員会の関係者にとって、必読の一冊が刊行された。
 危機が発生したとき、学校側の初動の対応には、「初動3原則SPP」があると著者は説く。SPPとは、ステークホルダー(利害関係者)、ポリシー(方針)、ポジションペーパー(説明文書)の3点である。その上、初動3原則SPPの具体化とそのチェックポイントを示し、トレーニングまで奨励している。やはり危機が起きてからでは遅いのだろう。こんなトレーニングを現職時代の評者はしなかったが、時代の要請だ。
 第4章では、実際に学校で起きた危機の事例を4件紹介している。今でも裁判が続いている東日本大震災で起きた石巻市の小学校での津波死亡事故には、改めて考えさせられた。
 当時の教務が山に逃げようと提案したのに受け入れられなかった。校長不在だったとはいえ、教頭や他の職員と教務の間でどのようなやりとりがあったのか。初動対応には、個人と組織の総合力が試されるのではないかと痛感した。
(2200円 教育開発研究所)
(庭野 三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員)

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