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コロナ時代に考えたい学校問題【第49回】

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蝉の命

「盆の入り 命限りと 鳴く蝉に 時を急ぐな 今暫くは」

 蝉は、何年も地中にいて地表へと出て僅か数日で命を繋ぎ、使命を終える。朝方に亡骸が蟻の餌となっている。その数日の命のドラマを私達はどう受け止めているだろうか。
 最近、蝉の姿に興味を示す子ども達が減少してきているように感じる。何故か?親や教師が虫に触れて育っていないのである。確かに昆虫も農薬の影響で激減している。以前、勤めていた学校の周りには梨畑が点在していた。農薬が散布されると蝉の死骸が校庭のいたるところに落ちてくる。農園も跡継ぎがいなくなって放置されると植物にウィルスが出て数キロ先まで感染すると農家の方は説明された。人工に作られた品種は、元々は自然界に存在していないのだから弱いはずである。
 地下深くに存在する石油の利用を発見して人工的に精製してタンカーで運搬し、人為的なミスで座礁し、自然界を破壊する。その復活には長い月日がかかる。
 湿原の遊歩道を歩いていたら手が届きそうな所にアキアカネが止まった。手を伸ばそうとしたときに、もし湿原に落ちたらと頭をよぎった。「この湿原の土壌が1センチ出来るには、100年掛かるんです」と説明を受けたネイチャーガイドの方の言葉が浮かんだ。手を伸ばさずに見送った。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題