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「最適化技術」の自動計算で卒業アルバム制作をもう一度楽しい仕事に!

8面記事

企画特集

画像抽出の条件を組み合わせて、欲しい枚数を設定、自動計算で結果を表示する

「高速画像処理技術」と「独自の最適化計算」で、卒業アルバム制作が劇的に進化する!
東工大発ベンチャー

 ―今回、SuperAlbumを開発した経緯は?
 杉本 私は東京工業大学大学院で、さまざまな画像処理の技術を研究していました。大学発ベンチャーとして研究室の仲間と(有)フウズラボを立ち上げてからは、その技術を応用したシステム開発にも取り組んできました。
ある時、中学校の教員をしている友人から「卒業アルバム制作の負担が大きくて大変」という話を聞き、私たちの技術が役に立つかもしれないと思いつきました。

 ―具体的にはどのようなことですか?
 杉本 先生方の気持ちは「子どもたちの登場回数をなるべく均等にしたい、卒業してからもずっと見て喜んでもらえる卒業アルバムを作りたい」ということなんです。けれどもページや写真の枚数の制限、限られた作業時間という制約もあって、写真の選択にとても苦労されているのだそうです。
それならば、私たちの強みである「高度な画像処理技術」と「独自の最適化計算技術」の二つの技術で、先生方の負担を劇的に減らせるのではないかと考えたのです。

画像処理技術と最適化技術
 ―画像処理技術と最適化計算、それぞれをもう少し詳しく説明していただけますか?
 杉本 まずは、イベント(行事やアルバムのページ)ごとに候補となるすべての写真を登録していただきます。
 顔の画像は、高精度な認識エンジンで登録された一枚一枚をデータ処理することによって、誰のどんな写真かを数値化しておきます。これに最適化計算という高度な数学的手法を加えると、児童生徒一人一人が、なるべく同じ登場回数になるように自動的に写真が選ばれるのです。
 それだけでなく、うまく撮れている写真かどうかの判断や、たとえば修学旅行のページには全員を一度は登場させたい、といった複雑な条件が設定できますので、アルバム掲載写真を希望どおりの組み合わせで選び出すことができます。
 従来は非常に手間がかかっていた写真選びが、わずか20分ほどで完了します。

 ―条件の設定は変えることができるのですか?
 杉本 はい。条件を変えれば選択される写真も違ってきますから、特徴のある組み合わせをいくつも作ることができますし、手動で写真の追加や差し替え、必ず掲載したい写真の設定などもできますので、出来上がりはこれまで手作業で作ってきたものと変わりません。
 また、画像を確認できるURLの発行機能がありますので、先生方と子どもたちがパソコン上で一緒に卒業アルバムを作るといったことも可能です。みんなの気持ちがいっそうこもった卒業アルバムになるのではないかと思っています。

今期は無料で使用可能
 ―どのようにすれば使えるのでしょうか?
 杉本 ホームページからログインをしていただき、ウェブ上で作業をする形になります。
 早い段階で幅広い皆さまに使っていただき、たくさんのご意見を集めて今後の参考にしたいと考えています。
 そこで、登録できる画像数は8000枚までの制限になりますが、今期はユーザー登録をしてくださった方には無料でお使いいただけるようにします。

進化する卒業アルバム
 ―夢が広がるお話ですが、SuperAlbumをこれからも進化させるようなご計画はありますか?
 杉本 自社開発の強みを生かして、まずは選択されやすい画像を学習し、最適化の計算結果の精度を上げたいと考えています。
 また、スマホと連動させた動画や音声などのデジタルコンテンツを表示するシステムは、すでに80パーセント程度開発が済んでいます。
 詳しくはお話しできませんが、将来的には卒業してからも写真を追加できるようにして、「ライフイベントを記録するデジタルアルバム」といったものも構想しています。

 ―本日はどうもありがとうございました。


杉本茂樹(すぎもと・しげき)
 静岡県静岡市出身。東京工業大学大学院在学中(1999年)に東京工業大学発ベンチャー第7号として研究室有志と有限会社フウズラボを設立し、取締役R&Dに就任。かたわら産学官連携研究員として東京工業大学で研究を続ける(2001~2016年)。工学博士。専門はコンピュータ画像処理、ニューラルネットワーク。

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