スロー・ルッキング よく見るためのレッスン
14面記事
シャリー・ティシュマン 著 北垣 憲仁・新藤 浩伸 訳
「重要な学習法」探究の書
「ゆっくり見ることは、重要な学習法」と捉える著者が「学びの方法としての『スロー・ルッキング』を探究」したのが本書である。
なぜ「スロー」なのかを解き明かし、「見るための方策」「スローの実践」「見ることと記述すること」で具体的なアプローチの方法と、それによって何がもたらされるかを述べていく。「博物館で見る、確かめる」や「学校で見る」「科学のなかの『見る』」の章では、それぞれの領域での意義が示される。
例えば、「スローの実践」の章では、小学生や高校生らがスロー・ルッキングを実践することで、見慣れた日常の光景に潜むものがたくさんあることに気付いていく様子などが紹介されている。「新鮮な目で見る」「視点を探る」「細部に気づく」「精神的な幸福感」の4テーマに沿いながら、子どもたちにもたらすものを示し、分かりやすい。
最終第9章で、「見ることと考えること」を取り上げ、「思考を中心とした学習成果の連続体」に「スロー・ルッキング」を位置付け、解説した。
本書では、しばしば教えなければならない内容を抱えた先生が、ゆっくり見る実践を選択できるか迷うことに理解が示されている。
だが、「見れば見るほど見えてくる」スロー・ルッキングのような試みに、課題が露呈する思考力育成へのヒントがあるのではないか。授業時数の関係もあるだろうが、”急がば回れ”。一考の余地はあるまいか。
(4620円 東京大学出版会)
(矢)