日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

ルポ 学校がつまらない 公立小学校の崩壊

14面記事

書評

小林 美希 著
教員不足、画一化指導の弊害問う

 何とも衝撃的なタイトルである。表立って口にするのは、はばかられる、しかし、もしかすると、誰もが一度は感じたことがあるかもしれない言葉を、あまりに端的に読者に突き付けてくる。
 本書は、かねて労働問題を巡って格差社会の問題を追ってきたフリー記者の小林美希氏が、格差の再生産の現場といえる学校教育をテーマに、長年の準備を経て上梓した労作である。とりわけ都市圏の公立小学校を中心に、子どもにとって、教師にとって「つまらない」場になりつつある学校の状況を追う。慢性化する教員不足と教師の過重労働が招く教育の質の低下、規格化・画一化した指導による子どもの個性の不容認、私立中学校受験の過熱化、小学校の統廃合や義務教育学校設置に伴う諸弊害…。1章から3章まで、さまざまなデータと共に、著者の綿密な取材から得られた教育関係者や保護者の声が効果的にちりばめられ、そのリアリティーには暗澹たる気分が漂う。4章および終章では、幾つかの意欲的な取り組みを参照しながら、公立学校においていかに柔軟な教育を取り戻し得るか、教育の本質とは何かを改めて問う。
 「つまらない」の対極は何か。面白く、心躍り、力みなぎる在り方とは…。「子どもが子どもらしく、自分らしく生きることができる社会を取り戻さなければならない」とする著者の投げ掛けに、無関心でいられる者はいないだろう。
(2640円 岩波書店)
(井藤 元・東京理科大学教授)

書評

連載