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社会関係資本を活かした学校づくり 事例とデータでみる子どもたちの「つながり」

18面記事

書評

志水 宏吉・中村 瑛仁・若槻 健 編著
「親ガチャ」など不均等是正も

 教育的に不利な「しんどい」環境にあっても学力を下支えしている「効果のある学校」「すべての子どもたちをエンパワーする力のある学校」について研究をしてきた編著者の志水宏吉氏らは、家庭・家族とのつながりを示す「離婚率」、学校・教師とのつながりを示す「不登校率」、地域の人々とのつながりを示す「持ち家率」といった数値と学力との相関が高いことに気付き「つながり格差」として社会に警鐘を促してきた。この人間関係が生み出す力、つながりこそが「社会関係資本」である。
 本書は、つながりを生かした学校づくりをより実証的に把握するため、関西地区5校の事例と3千人近い小・中学生への質問紙調査によって進められた共同研究の成果である。
 子どもたちが自身で選べなかった属性や環境によってつながりの実態は多様で、一筋縄にはいかないが、社会関係資本は、「親ガチャ」と称される経済資本や文化資本(親の学歴や教育観)の不均等を是正する可能性を有しており、これは高めることが可能である。
 対象5校の社会関係資本(子ども―子ども、教師、学級、家庭、地域とのつながり)には濃淡が見られるが、各校はつながりを「目標」としながら、アクションリサーチ(研究者とのつながり)によって望ましい方向へと経年変化させている。中でも教師間のつながりが重要な点にヒントがある。
(2970円 ミネルヴァ書房)
(元兼 正浩・九州大学大学院教授)

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