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令和7年通常国会質疑から【第11回】

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行財政

 国会では、法案審議のほか、議員が提示した課題に対して政府の見解をただす一般質疑が行われている。今年の通常国会質疑のうち、5月28日の衆議院文部科学委員会では、元文科相の松野博一氏が質問に立った。小・中学校の1単位時間を短縮することの意義を説き、現在の文科省の認識を尋ねている。

授業時間短縮と教員の長時間労働

 松野博一氏(自民) 学校現場では、教師の努力によって大きな成果が上がっているが、その成果が長時間労働に支えられている現状には課題がある。このままでは、日本の義務教育の持続可能性に影響が出かねない。
 給特法改正が進む中、教員志望者が減っている最大の理由は長時間労働であり、いよいよ本質的な改革が求められている。
 その一環として、中学校50分、小学校45分とされている単位授業時間が、本当に適切で効率的なのかを検証すべきではないか。例えば、小学校の授業時間を45分から40分に短縮した場合、学力や授業効率、教員の在校時間にどのような変化が生じるのか。
 文科省が進めている研究校での40分授業の成果を踏まえ、現時点での評価と考え方を伺いたい。

 初等中等教育局長 単位授業時間を5分短縮し、その時間を子供の特色ある学習活動や教職員の研究・研修に充てる取組を、研究開発学校制度の下で進めている。令和7年度からは実施校・実施自治体を大幅に拡大した。
 先行実施校からは、授業への集中力が高まった、教員の授業研究が充実し教育の質向上につながったとの声が寄せられている。
 特に、令和元年度から全小学校で取り組んでいる東京都目黒区では、全国学力・学習状況調査の正答率が取組前後で低下しておらず、時間外在校等時間も縮減したとの研究成果が報告されている。

 松野博一氏 児童心理学の観点からは、小学校低学年の集中力は15~20分程度とも言われている。
 5分の授業時間短縮でも学力が維持され、教員の在校時間も減っているのであれば、その成果を広く公表し、全国的に展開していくべきではないか。
 成果の公表方法や研修への活用、また各教育委員会が判断・実行する際に必要な手続きについて伺いたい。

 初等中等教育局長 目黒区の事例では、学校によって差はあるものの、時間外在校等時間が月平均で約6時間減少したとの報告がある。
 研究開発学校の成果は文科省ホームページで公表しており、中教審の特別部会でも目黒区教育委員会から事例発表が行われた。
 ただし、研究開発学校は指定校制度であり、全国一律に同様の取組ができる仕組みにはなっていない。授業時間の短縮自体は各学校の判断で可能だが、その時間を裁量的活動に充てるには研究開発学校としての指定が必要となる。
 今後は、これまでの成果や課題を整理し、公表を進めることで、自治体が判断する材料を提供していきたい。中教審での検討も通じ、教育の質向上と教員・子供双方の余白を生み出す在り方を探っていく。

 松野博一氏 授業時間を5分短縮すれば、1日30分、週150分、月では10時間の時間を生み出すことができる。一定の条件付きではあるが、できるだけ早く、各教育委員会の判断で柔軟に決定できる制度へ移行することを求めたい。
(議事録を要約)

令和7年 通常国会質疑から