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2026年に注目の教育キーワード10選

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特集 教員の知恵袋

 2026年度(令和8年度)は、日本の教育施策における「構造的転換」の年です。次期学習指導要領の答申や部活動改革のフェーズ移行など、「質の高い公教育」の維持と「働き方改革」の両立を目指し、これまで議論されてきた将来を見据えた改革が、いよいよ実行段階に入ります。

 本記事では、2026年に注目すべき教育関連の10のキーワードについて、最新の動向を紹介します。

1.次期学習指導要領改訂に向け中教審が答申へ(2026年度内)

 2025年9月19日に示された「論点整理」に基づき、中央教育審議会では次期学習指導要領の改訂に向けた議論が加速しています。
 次期学習指導要領では、主に次の3つの方向性を軸に議論が進められています。

▽議論の柱となる3つの方向性

 ・「主体的・対話的で深い学び」の実装(Excellence)
 ・多様性の包摂(Equity)
 ・実現可能性の確保(Sustainability)

 特に、情報活用能力の強化や、教育の質向上に向けた教師・生徒双方の時間的余裕の創出が、主な論点となっています。
 2026年度(令和8年度)の夏頃までに、検討結果が「一定の取りまとめ」として集約され、2026年度内には今後の教育課程の指針となる答申がまとめられる予定です。

出典:文部科学省『教育課程企画特別部会 論点整理(案)

2.部活動の地域展開で「改革実行期間」がスタート

 2023年度から2025年度までの3年間を「改革推進期間」として進めてきた公立中学校の休日部活動の地域移行が、ここまでの成果と課題を踏まえて、2026年度から本格的な「改革実行期間」へと移行します。
 本施策の主な目的は、大きく分けて次の2点です。

▽地域移行の主な目的

 ・生徒にとって望ましいスポーツ・文化芸術環境を確保する
 ・教員の負担軽減を図り、学校の働き方改革を推進する

 スポーツ庁・文化庁が取りまとめた「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」では、改革実行期間は前期・後期に区分して計6年設定されています。

▽改革実行期間の取り組み

 ・前期:地域展開の集中取り組み期間。原則全ての公立中学校などで、休日の地域展開を目指す
 ・後期:改革の定着・深化期間。平日の移行も含めた完全実施への移行

 施策名が「地域移行」から「地域展開」とされ、学校や地域、家庭の連携を強調しているのがポイントです。
 指導者確保や費用負担のあり方について、国・自治体の支援スキームが強化されます。

出典:スポーツ庁・文化庁『部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン

3.三党合意に基づくいわゆる高校無償化がスタート

 2025年2月の自由民主党・公明党・日本維新の会の三党合意に基づき、2026年4月から高校授業料無償化の新制度が開始されます。

 新制度では、高等学校等就学支援金の所得制限が撤廃され、実質的に全世帯が対象になります。私立高校の授業料も、年額45万7,000円を上限とする就学支援金が、一律で支給されることになりました。
 さらに、私立通信制高校への支援も拡充。教育の機会均等を経済的に保証します。

 一方で、「経済的な理由で公立を選ぶ」という消極的な理由から公立高校が選ばれるケースが減ることから、公立・私立高校のパワーバランスに変化が生じ、生徒獲得に向けた競争の激化も懸念されています。

出典:文部科学省『いわゆる高校無償化をめぐる動向について

4.4月から「主務教諭」創設へ

 学校組織のマネジメント機能強化のため、学校教育法等の改正を経て、新たな職位「主務教諭」が2026年4月から新設されます。主務教諭は教諭と主幹教諭の中間として位置づけられ、若手教員への指導・助言や、学校内外との総合調整などを担います。

 教職調整額引き上げなどの処遇改善パッケージの一環として実施され、主務教諭には教諭よりも月額6,000円程度高い給与が支給される予定です。

 一方で、主務教諭の設置には「手当なしで過重な業務を担うのではないか」という懸念も指摘されています。

出典:文部科学省『教師の「働きやすさ」と「働きがい」実現プラン』国立国会図書館『第217回国会 参議院 文教科学委員会 第8号 令和7年5月22日

5.全国学力学習状況調査、中学校英語でCBT方式

 2026年度の全国学力学習状況調査において、中学校英語の全領域(聞く・読む・書く・話す)がCBT(Computer Based Testing)方式で実施されることになりました。
 データ活用の促進や測定内容の充実、実施負荷削減などが導入の主な狙いで、従来の試験とは異なり、コンピューターを使用して試験が実施されます。

 注目すべき点は、「話すこと」調査の本格的な実施です。受験する生徒はヘッドセットを使用し、音声を録音・アップロードする方式で試験を行います。
 従来のペーパーテストでは測定が難しかった能力を測る取り組みである反面、全国の中学生が一斉に音声データをアップロードすると、ネットワークへの影響は避けられません。

 そのため、文部科学省は4月下旬の複数日程で実施するなど、ネットワーク負荷を分散する措置を講じる計画です。
 2027年度以降の全教科CBT化に向けた重要な試金石ともなるこの試験の成否は、教育DXのスピード感にも影響を与える可能性があります。

出典:文部科学省『令和8年度英語「聞くこと」「話すこと」調査の実施方法について

6.不登校対策で校内教育支援センター支援員の配置拡大

 小中学校における不登校児童生徒数が過去最多を更新し続ける中、文部科学省は「誰一人取り残されない学びの保障」を掲げた不登校対策(COCOLOプラン)を推進しています。
 2026年度はこのCOCOLOプランに基づき、校内教育支援センターの支援員の配置校を大幅に増やすことが検討されています。
 教育委員会を通じて経費を保持し、現在の2倍に当たる4,000校規模への拡充を目指す計画です。

 今回増員される「支援員」には、以下の役割が期待されています。

 ・学習支援:オンライン教材等を活用し、教科学習の遅れを取り戻すサポート
 ・相談・対話:児童生徒の悩みを受け止め、自己肯定感を育む
 ・調整役:担任教員やスクールカウンセラー、保護者との連携ハブとなる

 また、学習支援だけでなく、相談支援や教室復帰へのスモールステップを支援しており、不登校の兆候が見られる段階からの早期介入体制を整備します。

出典:文部科学省『不登校児童生徒への支援について』『令和8年度 文部科学省予算(案)のポイント

7.外国人児童生徒等への教育充実へ

 日本語指導が必要な児童生徒の急増を受け、外国人児童生徒への2026年度の関連予算が前年度の約15億円から約17億円規模へ増額されます。
 日本語指導補助者や母語支援員を活用した指導体制の構築、学校外における自治体の取組支援など、日本語指導を含むきめ細かな支援の充実などを予定。

 その他、教育支援基盤の整備や夜間中学の設置促進など、在留外国人が日本国内で教育を受けるための整備が進められる予定です。

出典:文部科学省『令和8年度 文部科学省予算(案)のポイント

8.学習指導要領改訂を見据え情報活用能力の抜本的な向上へ予算措置

 日本のデジタル競争力は、世界的に低迷しているのが現状です。そこで、文部科学省はGIGAスクール構想の更なる推進と学校DXの加速を見据えた投資を予定しています。想定されている主な事業内容は、以下の通りです。

▽事業内容

 ・情報活用能力育成のための実践・調査研究
 ・情報活用能力の育成・情報モラル教育に関する指導充実のための総合的な支援
 ・中学校技術科における免許法認定講習の強化

 具体的には、情報教育をどの学校でも実施するための学習者用教材の開発や、授業で活用できるコンテンツの充実、中学校技術科の免許を取得しやすくするためのオンラインを前提とした認定講習プログラムの開発運用などが見込まれています。

出典:文部科学省『令和8年度 文部科学省予算(案)のポイント

9.新たな「定数改善計画」策定へ

 教員不足の解消と教育の質の向上は、表裏一体の関係です。人員不足と教育の質向上を目的に、2026年度を初年度として、2028年までの新たな教職員定数改善計画が策定されます。

 35人学級の中学校への拡大や、小学校教科担任制の推進、いじめ・不登校対応などのための体制整備などが内容として盛り込まれており、2026年度から2028年度までの3年で、教職員を24,605人改善するとしています。
 教職員を取り巻く環境がどのように変わっていくかに注目です。

出典:文部科学省『令和8年度 文部科学省予算(案)のポイント

10.「科学技術人材」に関わる政策等を一体的・体系的・総合的に推進

 2026年度、政府は科学技術・イノベーション政策の推進を担う中核的基盤である「科学技術人材」に関連する政策や施策をパッケージ化し、一体的に推進します。
 特に、日本の弱点といわれている博士人材への処遇改善や、若手研究者の挑戦的研究への支援など、科学技術人材への投資が抜本的に強化される予定です。

▽科学技術人材施策の3つの取り組み

 1.多様な科学技術人材の育成・活躍促進
 2.各教育段階における科学技術人材の育成
 3.科学技術人材に関わる制度・システム改革の推進

出典:文部科学省『令和8年度予算(案)のポイント』『科学技術人材施策パッケージ

まとめ

 2026年は、これまで行われてきた議論が実際の施策として形を成す1年です。次期学習指導要領の答申によって学びの質が再定義されるだけでなく、部活動の地域展開や定数改善計画の策定といった「教育環境」の抜本的な見直しも同時に進みます。

 ただし、これらの改革は、現場に負荷と混乱をもたらす可能性があります。今後の教育現場がより良い方向に向かうには、教育関係者だけでなく、社会全体で連携していくことが重要です。

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