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アクティブ・ラーニングどう実践

10面記事

高校

授業改善へ高まる期待

 次期学習指導要領の検討の柱の一つとなっている主体的、協働的な学習、いわゆる「アクティブ・ラーニング」。入学選抜の在り方と同様、高校教育と大学教育の内実を効果的につなぐために、高大ともに授業改善の手だてとして求められている指導方法である。公立、私立のそれぞれの高校が取り組む「アクティブ・ラーニング」の実践を紹介する。

自ら「問い」持ち学習
インターン体験 価値付けし提案
他者と接し「自己内対話」へ
公立 広島県立安芸高校

 「よく誤解されるのは、アクティブ・ラーニング=グループ学習をやればいいのではないかと思われること。大切なのはグループ学習ではなく、生徒自身が『問い』を持つこと。学びの主体が変わることだ」と、広島県立安芸高校の柞磨(たるま)昭孝校長は話す。
 同校に赴任したのは、平成26年4月。前任校時代、当時の校長の下、学び合いの実践を体験した。自身も能動的な学びを模索していたところ、カナダで実践されるICEモデルを使ったアクティブ・ラーニングに出合い、その導入が始まった。
 総合学科を設置する同校では、2年生がインターンシップに取り組む。だが、形骸化が見えたことから、改善しようと、問題解決学習を取り入れたPBL型インターンシップの転換を図った。従来の与えられたプログラムに参加して体験し、発表するものから、成長への問いを持って参加し、体験したことを再構成・価値付けした後、提案をまとめるなどすることで、今後の生活改善に生かすアクティブ型へと移行した。
 事前学習、インターンシップを「第1ターム」、まとめ・発表に当たる再構築・経験の価値化、提案書作成・発表を「第2ターム」とし、「第2ターム」では再構築の過程でインタビューや問い直し、統合、報告内容の検討といった活動を取り入れ、「自己に問い掛ける力」の育成を実現しているかどうかにも注意が払われる。
 教科に関しては2学期から取り入れた。教務部を中心にアクティブ・ラーニングの指導書や技法集を作成するなどして、円滑な導入を目指した。授業では基本的には基礎知識の確実な定着を図るインプットを大切にし、知識の活用を比較、抽出、誤答訂正、物語創作、問題作成、仮説検証などで、アウトプットしていく。
 授業を展開する上では「対話」と「承認」を重視する。生徒の実態から励ましによる承認と、努力に基づく成功経験とその自覚が不可欠、と考えたためだ。
 また、本当に力を付けるためには、「自己内対話」が重要と柞磨校長は指摘する。他者との交流は自己内対話を深めるためであり、さらにリフレクションカードを活用し、個々が学びを深める。
 この一連の流れは、広島県教委が進める「ICEモデル」の流れと結果的に軌を一にした。同校がアクティブ・ラーニングをいち早く取り入れ、その年の終わりに、「ICEモデル」を活用した「学びの変革」アクション・プランを同県教委が打ち出して、同校の取り組みに追い風が吹いた。
 導入に当たっては、校長自身が全体研修の講師を務め、理解を促しもしたが、むしろ効果があったのは教員一人一人と面談をし、一人ずつの授業を見ながら、場合によっては指導案を修正するなど、具体的な改善点を話し合うようにしたことだったという。
 教員が指導を工夫し、生徒たちは教え合いを苦にしなくなった。中には、リフレクションカードに授業の変化を歓迎する感想を書き込み、それを読んだ教員の意欲がさらに高まるケースもあった。
 「教えたことを指名して答えさせる、教員自身が一生懸命に動き回る…などは、生徒の主体的学びにつながらない。アクティブ・ラーニングは技法にすぎず、いかに生徒の学びを深めるかが大事」。授業を変えていくのは、今の生徒を前にしたとき、教員が主体的な学びに必然を感じるかどうかにかかっているのでは、と柞磨校長は話した。

「ICEモデル」とは
知識つなぎ、学び深めるイメージ
広島県教委

 広島県教委はグローバル化する21世紀の社会を生き抜くための新しい教育モデルの構築「学びの変革」アクション・プランをまとめた。平成26年12月のこと。
 従来の知識習得重視の受動的な学びから、コンピテンシーの育成を目指した主体的な学びへと大きくかじを切った。
 そのための授業改善として、「課題発見・解決学習」を推進していくとし、その手法の一つに「ICEモデル」を位置付けた。カナダのスー・F・ヤング博士らによって開発されたもので、アクティブ・ラーニングを加速させるモデルともいわれている。
 「I」は「考え・基礎知識」(Ideas)、「C」は「つながり」(Connections)、「E」は「応用・ひろがり」(Extensions)である。
 同県教委の教育資料では、それぞれの段階の活動で使用する「動詞」を挙げ、学びの深さを実感できるようにした。
 「考え・基礎知識」では定義する、記述する、説明する、暗記する、計算する、反復するなど、「つながり」では比較する、分類する、推論する、差別化する、統合するなど、「応用・ひろがり」では発明する、創造する、提案するなどだ。
 「課題発見・解決学習」を評価する際には、知識をつなぎ、表面的なものから深い知識へと学びが深まる段階的なイメージを持つことが大切としている。具体的な単元事例を挙げ、「考え・基礎知識」「つながり」「応用・ひろがり」の具体を記述し、学習の流れ、指導上の留意事項、評価方法などを例示した。

海外生徒と交流・プレゼン
ネットなど活用「リアル」な英語経験
「協働的な学び」で意欲喚起
私立 羽衣学園中・高校

 「教育現場に立った、最大の理由は『リアル』の必要性」。こう話すのは、私立羽衣学園中学校・高等学校の米田謙三・情報科主任、国際交流室室長。学生時代に経済を学んだものの、海外で十分に通じない英語に疑問を持ち、学部を超えて学び直し、地歴公民、英語の免許状を取得後、英語教員として教壇に立った。
 生徒たちに「リアル」な経験をさせ、学習意欲を喚起させることを心掛ける。
 例えば、英語では、音声だけのリスニング、教室内だけのやりとりから、海外の学校と積極的につながることで、当初はインターネットを活用したEメール、ビデオの交換などで交流を進め、生徒たちの学ぶ動機を刺激した。今では、ICTツールに、電子黒板やeラーニングが加わった。
 教員としては「『英語』業界には『情報ツールの活用』が苦手な人が多いといわれる」中で、ICTを駆使する実践に取り組んだことから、ユネスコやブリティッシュ・カウンシル、APECの教育部門などの会議に出席する機会を得て、会議で知り合ったアジアの教員たちと知り合い、国際交流機会が充実した。
 その一方で、ここ10年ほどは一貫して、英語では学習スタイルとしてPCやタブレットを活用した一斉学習、協働学習、eラーニングを採用した個別学習を取り入れる。ペアやグループによる学習、話し合い、教え合いなど、協働学習に当たる部分が、今で言う「アクティブ・ラーニング」に当たる。
 個別学習を取り入れるのは、「学力」もキーワードとして存在するためだ。しかし、反転学習のための予習や、eラーニングなど個別学習の手だての種類は増えているものの、一人でコツコツ学習することを求めるには、今の生徒たちは忙し過ぎる、と米田さんはみる。
 生徒のモチベーションを上げ、学ぶ意欲を湧かせるのは「協働的な学びにある」と、米田さんは指摘する。1人では無理でも、友達との関わりがあれば、持続する。「40人いる教室で、教師が生徒一人一人の面倒を見ていくには限界がある。個別学習でも、協働的な学びにつながるようファシリテートする力が求められる」と話す。
 同校には、マレーシアや台湾など、特にアジア圏の学校から生徒が訪問してくる。生徒らが学校を案内し、学校などについてプレゼンテーションする機会は「リアル」そのもの。特に、生徒がプレゼンテーションする場合、「友達ではない人にプレゼンテーションする機会をつくることがポイント」。海外の生徒とはプログラム学習なども一緒に行い、英語で一緒にプレゼンテーションもする。海外の生徒と接することでモチベーションは間違いなくアップする。
 また、ICTの活用は、英語以外の他の教科にも効果を生む。一つは、デジタル教材。テストは復習が容易で個別学習の促進につながること。数学の授業などで問題の解説をノートに写すだけの時間から、予習が可能であれば授業中にも、さらに問題の理解を深める時間にできる。各教科の小テスト、問題作成にはICTのソフトは有効であり、教員の校務負担を軽減する。
 実践の上で、もう一つ大切にしているのは「高校時代にいろいろな大人に出会うこと」。そのため、さまざまな企業の協力を得て、産学連携の下、実践を展開してきた。
 また「教育を学校の中だけで終わらせるべきではない」と考え、教育ソースを学校外に求める。その一つが公益社団法人日本ユネスコ協会連盟の「世界寺子屋」プロジェクトへの参加。自分たちでリーフレットを作成し、募金などを集め、カンボジアに実際に学校を造る。その学校には募金した学校名が記載される。生徒が「リアル」な実感を得ることができる活動になっている。
 ただ、アクティブ・ラーニングを進めるには、幾つか課題もあるという。
 その一つは「圧倒的な事例の少なさ」。教科ごとの事例収集の必要性を指摘する。一方、学ぶ側の課題には、「聞くこと」「話すこと」ができる姿勢づくり。グループによる学習も、「グループに入れない生徒がいる」ことも意識しながら取り組んでいく方法も課題だ。
 最近、かるたを使ったアクティブ・ラーニングに取り組んだ。教材はSNSを運営するミクシィのもの。メディアリテラシーを学ぶためだが、5〜6人でグループをつくり、1枚ごとに読み手を交代しながら、選んだ取り札の正誤と、読み札に書かれた解説・補足を読み上げる仕組みで、友達同士でなくてもグループとして取り組めるよう工夫する。かるたを誰もが学べる親しみやすい教材として選択した。

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