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高校教育改革 何がどう変わる

11面記事

中教審

中教審答申から

 一足早く幼稚園教育要領から小学校、中学校の学習指導要領が告示、改訂された。幼稚園は平成30年度、小学校は32年度、中学校は33年度からの全面実施である。高校は29年度末までに学習指導要領案が示され、告示、改訂する。実施は34年度の1年生から順次進行する予定だ。だが、その前には、「高等学校基礎学力テスト」(仮称)が31年度、「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)が32年度とそれぞれ織り込まれており、改革は先取りされていく。「これまでの改訂以上に大きな意義を持つ」と書き込まれた高校の次期改訂。「高大接続改革」も視野に、何がどう変わるのか―。今号から特集を掲載していく。

求められる授業改善
「チョーク&トーク」脱却を

 学習指導要領改訂の前段となる、中央教育審議会による答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」(平成28年12月21日)では、高校教育への期待は大きい。
 例えば「とりわけ社会への出口に近い高等学校が、初等中等教育の総仕上げを行う学校段階として、子供たちに必要な資質・能力とは何かを明確にし、それをしっかりと育み次につなげ、生涯にわたって学び続けることの意義を生徒が見いだせるようにしていくことができるかどうかは、単なる接続の問題ではなく、子供自身の人生や未来の社会の在り方に関わる大きな課題」とした。
 その上で「次期改訂は、高大接続改革という、高等学校教育を含む初等中等教育改革と、大学教育改革、そして両者をつなぐ大学入学者選抜改革の一体的改革や、キャリア教育の視点で学校と社会の接続を目指す中で実施されるものであり、特に高等学校にとって、これまでの改訂以上に大きな意義を持つものであると言える」と述べている。
 「高等学校教育を含む初等中等教育改革」は、小・中学校の学習指導要領改訂で示された方向からも全体像は見える。
 「2030年の社会と子供たちの未来」を見据え、学校教育がこれまでその育成を目指してきた「生きる力」をあらためて捉え直し、育成する。その際「解き方があらかじめ定まった問題を効率的に解いたり、定められた手続を効率的にこなしたりすることにとどまらず、直面する様々な変化を柔軟に受け止め、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかを考え、主体的に学び続けて自ら能力を引き出し、自分なりに試行錯誤したり、多様な他者と協働したりして、新たな価値を生み出していくために必要な力を身に付け、子供たち一人一人が、予測できない変化に受け身で対処するのではなく、主体的に向き合って関わり合い、その過程を通して、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となっていけるようにすることが重要」だという。
 そのために、「何を学ぶか」を主に定めてきた従来の学習指導要領から、「何ができるようになるか」も重視し、さらに「どのように学ぶか」についても盛り込まれることになった。中教審論議の過程で「アクティブ・ラーニング」と称されていた学び方は、「主体的・対話的で深い学び」として学習過程を改善する視点に位置付いた。
 特に、授業改善が求められているのが、高校教育である。いわゆる「チョーク&トーク」の授業からの脱却が要請されている。教員側からは、こうした指導方法を求める大学入試の在り方の改善の必要性が指摘されたため、高校教育も大学入試の在り方も変えようというのが「高大接続改革」の要諦である。

高等学校の各学科に共通する教科・科目等及び標準単位数
高等学校の各学科に共通する教科・科目等及び標準単位数

育てたい生徒の姿明確に
「共通性の確保」「多様性への対応」踏まえ教育課程編成

 今回の高校の教育課程は「各学校が、社会で生きていくために必要となる力を共通して身に付ける『共通性の確保』の観点と、一人一人の生徒の進路に応じた多様な可能性を伸ばす『多様性への対応』の観点を軸としつつ、育成を目指す資質・能力を明確にし、それらを教育課程を通じて育んでいくことが重要である。また、育成を目指す資質・能力と教育課程の在り方を、生徒や社会と共有していくことも重要である」としている。
 「共通性の確保」と「多様性への対応」を踏まえた教育課程の編成を目指し、学校ごとの実態に応じて「育てたい生徒の姿」を明確にしながら、教育課程を通じて育んでいくことを求めている。
 こうした教育課程の編成に当たっては、(1)学び直しの充実(2)学習評価の改善・充実(3)各学校の特色ある教育課程編成の推進―を求めた。
 学び直しに関しては、すでに現行学習指導要領の中で、義務教育段階の学習内容の確実な定着を図るために「各教科・科目の学習の中で、学び直しの機会を設けること」「必履修教科・科目について学習指導要領に定める標準単位数より増加して履修させること」「学校設定教科・科目として学び直しを行うこと」といった具体的工夫が示されている。
 こうしたニーズへの対応は今後も求められるが、さらに、新たに導入される「高等学校基礎学力テスト」(仮称)を活用した指導の充実や、前出の学校設定教科・科目の設置などを含めた対応などを学習指導要領上により明確化するとともに、具体的な取り組み事例を広めていくことなどにも触れている。
 学習評価の改善・充実に関しては▽観点別評価の実施▽多面的な評価の充実▽キャリア形成を見通し振り返る自己評価の充実▽「高等学校基礎学力テスト」(仮称)の活用▽教員の評価能力の向上に向けた研修等の充実―を示す。
 特に、観点別評価では「知識量のみ問うペーパーテストの結果」「特定の活動の結果」などによる「偏重した評価」への危惧が表明されており、義務教育までにバランス良く培われた資質・能力を発展・向上させるべく「観点別の記載欄を設けた指導要録の様式例を示すことなどを通じて評価の観点を明確にし、観点別評価の一層の充実を支援していくことが重要」と方向を示した。
 また、多面的な評価の充実では、新たに打ち出される「総合的な探究の時間」や「理数探究」などの評価の在り方の開発・普及、生徒一人一人の良さや可能性から「個人内評価についても併せて充実を図る必要」などにも言及し、何より高大接続改革を推進する一環として行われる入試改革において多面的な評価の充実が求められている。この他、キャリア形成を見通し振り返る自己評価の充実では、自分の学習状況、キャリア形成を点検できる「キャリア・パスポート」(仮称)の活用も盛り込まれている。
 検討が進む「高等学校基礎学力テスト」(仮称)、都道府県独自の調査、校長会の検定などの活用による基礎学力の定着度合いの点検、指導の工夫・充実など「教育課程の改善を図るサイクル」の構築の重要性も明示した。
 また、各学校の特色ある教育課程の推進では、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)、スーパーグローバルハイスクール(SGH)、スーパー・プロフェッショナル・ハイスクールなどの教育課程の研究成果、国際バカロレアのカリキュラムなどを踏まえ「各高等学校が特色ある教育活動を実施していく観点から、教科等における学びと教科等横断的な学びを教育課程の中でより一層効果的に関連付けていくことも求められる」などとした。

今後の主な改革スケジュール
今後の主な改革スケジュール

中教審

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