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環境教育の重要性とは 未来を託す子どもたちに何を教えるべきなのか

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特集 教員の知恵袋

 地球温暖化、プラスチックによる海洋汚染、森林の破壊、希少生物の絶滅、オゾン層の破壊…。私たちの周囲では、身近なテーマから地球規模の課題までさまざまな環境問題が浮上し、深刻さを増しています。豊かな地球の環境を守り、子孫に伝えていくためには、未来を託す子どもたちへの環境教育が欠かせません。現在、教育現場でどのような環境教育が進められているのでしょうか。

環境教育は持続可能な社会づくりの第一歩

 さまざまな環境破壊の背景に潜むのは、生活の豊かさを目指して突き進んできた人類の活動です。これまで環境破壊の多くを先進国が引き起こしており、地球温暖化であれば中国が世界最大の二酸化炭素排出国になっています。

 現在でも環境破壊がより大きなものとなって地球全体を包み込む深刻な問題になることが懸念されています。こうした現状を打開するためには、私たちが暮らしを見つめ直し、持続可能な社会に切り替えていかなければなりません。これからその役割を果たしていくのは次の時代を担う子どもたちです。

 そこで、文部科学省は学校や企業が一体となって環境教育を進め、環境保護に主体的に参加して責任ある行動ができる子どもたちを育てようとしています。

ESDの推進がSDGs達成の後押しに

 環境教育は、先進国で公害が問題化した1960年代から推奨されるようになり、1972年の国連人間環境会議によって国際的に関心が高まりました。

 日本では2002年にESD(持続発展教育※1)という日本発の新たな教育理念が提唱されました。さらに2004年には環境教育推進法が施行され、本格的に教育現場で環境教育がスタートしています。
 ※1 ESDとは、現代社会のあらゆる問題の解決に向け、環境、人類への価値観や思考、分析力を育み、持続可能な社会づくりに貢献する人材を育成すること

 2030年までの国際的な目標であるSDGs(持続可能な開発目標)の達成を後押しするとも考えられています。

多岐にわたる学習課題を多面的に扱うことが大切

 日本の学校では環境問題に関わる学習の充実が図られています。現在の学習指導要領は道徳教育の目標の1つとして環境保全への貢献を掲げ、総合的な学習の時間をはじめ、社会や理科、生活など多数の教科で環境教育を推進しました。

 しかし、学習課題が広範囲なのにもかかわらず、教科ごとにまとまっていて教科間の連携が少ないとの指摘が出ています。国立教育政策研究所は学習指導要領の改訂を踏まえ、多岐にわたる学習課題を多面的かつ総合的に扱う学習が必要だと提言しました。

幼い段階から幅広い内容の授業を実践

 日本では現在、幼児や小学生に対し、どのような環境教育が行われているのでしょうか。

 名古屋市の幼稚園では私たちの暮らしと直接関係しているごみの処理や回収した資源のリサイクルなどを学んでいます。

 横浜市の幼稚園では身近な自然の観察を進められているようです。身近なテーマが多いとは言え、幼い段階から幅広い内容が含まれています。

幼稚園では自然観察や資源回収に力

 幼稚園や保育所では幼児期から自然や環境に興味を持てるようにする教育に力を入れています。

―札幌市
 札幌市西区の平和幼稚園では、電気や水を大事に使うことを教えるだけでなく、保護者と連携してリサイクルに向けたごみの分別に挑戦し、その収益で絵本を購入しました。

―名古屋市
 名古屋市守山区の小幡あさひ幼稚園は名古屋市の「なごやエコキッズ事業」に参加し、紙パックやペットボトルの回収を進めています。

―横浜市
 横浜市青葉区のナザレ幼稚園は自然教育施設として所有する約5,000平方メートルの里山で園児が自然観察を続けています。

小学校は一歩進んだ学習内容に

 小学校では低学年が自然や生き物と触れ合うとともに、エネルギーやリサイクルについて知る活動を進めているのに対して、高学年は地球環境問題や森林保護などを学びます。

 環境省に以下のように具体的な活動事例を掲載しています。

 ・森を観察しながら地域の人に木の手入れについて教えてもらう
 ・昆虫の卵を採集し、成虫になるまで育てる
 ・ハイブリッドカーや電気自動車など環境にやさしい自動車の工場を見学する
 ・ソーラークッカーを使い、太陽光で調理実習する

 小学校の授業では日常生活で実践できることを考えるといった一歩進んだ内容になっています。

環境教育のためにNPO法人や企業は教材を制作

 環境教育の教材はNPO法人や企業、自治体も制作しています。資料準備時間の短縮などに効果的で、自治体やNPO法人などの出前授業を利用する方法もあります。

 例えば、大阪府や茨城県では幼稚園や保育所だけでなく、家庭でも子どもが環境教育について学べる教材を制作しました。ほかにも、富士通株式会社とWWFジャパンが共同で制作した、タブレットPCを活用しながら地球の環境問題について学習する電子教材もあります。

学校教育のみで狙いを達成するのは困難

 環境教育の重要性は、ますます高まると予想されています。しかし、環境問題は多種多様で、学習領域も自然科学や社会科学だけでなく、一人ひとりの感性や心の問題にまで及びます。学校教育のみで狙いを達成するのは難しいと言えるでしょう。

 幼少期から家庭、学校、地域でさまざまな取り組みを実践することにより、初めて実効を得られるものです。家庭や地域と連携して環境問題を身近に意識させ、体験型学習を充実させる必要もあるでしょう。学校内の取り組みも教科ごとでまとまらないように連携して取り組むことが求められています。

各家庭で環境問題を考えることが重要

 身近で起きている環境問題について学習し、それぞれが解決策を考えることは新しい学習指導要領で強調されている子どもたちの生きる力を育むことになります。学校での取り組みを充実させるだけでなく、各家庭でも環境問題について考えることが重要です。

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