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「関わり合い、共に学ぶ」という価値から教育活動をつくり直す

12面記事

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学びの保障に向けた再開後の取り組み <小学校編>
西脇 裕高・東京都杉並区立荻窪小学校校長

 再開にあたっての本校の取り組みと、「学びの保障」をどう考えているかについて紹介します。
 学校においては、3密のうち、密閉は教室環境に配慮、工夫することで対処可能ですが、密集、密接については完全に回避することは難しいことです。むしろ小学校では、「学び合い」を重視して学習活動を展開してきました。子ども同士が関わり合ってこそ、学びが成立します。子どもたちは、問題解決に向かって頭を寄せ合い、話し合いながら自分の考えを深めてきていました。学校再開にあたり、この「学び合い」を回避してしまっては学校で学ぶ意味が無くなってしまいます。保障すべき学びは、この「学び合い」でこそ育まれるものと考えています。感染症対策を講じながら、どのように「学び合い」を進めていくのかが今、一番の課題です。

子どもの身体と心の健康管理
 具体的には、子どもたち健康状況を確実に把握し、感染予防の基本中の基本であり最大の効果がある「手洗い」をいかに確実に行えるかです。家庭での登校前の検温と健康観察をお願いし、登校時に検温・健康観察表による一人一人の確認を確実に行っています。検温をし忘れた子どもは、昇降口横のホールで教室入室前に検温をして健康確認をしています。
 教具の共有場面もどうしても出てきます。この場合は、道具の消毒よりも手洗いの励行が効果的だと考えます。授業時間を割いてでも、手洗いの時間を確保しています。
 感染症対策のための学習も、再開当初に全学級で行いました。マスク着用や必要な距離をできる限りとるという指導の中で、マスクの着用は自分のためにも友達のためにも必要なことと捉えられるように、発達段階に応じて話をしました。ソーシャルディスタンスは「思いやりの距離」だと伝えています。医療従事者や流通業の方への感謝の気持ちや憶測や差別から生まれる疑心暗鬼による不安の増大への注意も学ぶように取り組みました。感染予防を通して、「心を育てる」ことを目指しています。

学習時の感染予防と学びの保障の手立て
 体育と給食時以外は常にマスクを着用しています。ペアやグループでの話し合い活動は行いますが、机を離すなど距離をとっています。ものの配布や提出物も置く場所を決め、各自で取ったり置いたりしています。音楽では当面、歌唱やリコーダー演奏は控え、家庭科の調理実習も1学期は行いません。
 夏休みを3週間に短縮し、月2回の土曜授業を実施すること、行事の大幅な削減(密集回避もある)、特別活動の中止(学年を越えての接触回避もある)等により、標準授業時数を確保し、「学び合い」のある学習を丁寧に進めていきます。休校期間があったからと、詰め込むような授業は決してしないようにしていきます。
 ペアやグループでの話し合い活動は、積極的、効果的に進めますが、活動場面や時間に配慮して感染予防をしながら取り組みます。休校期間に友達と関わる楽しさを再確認した子どもは本当に多いので、共に学び合うことをこれまで以上に楽しみ、主体的に活動しています。
 子どもの高い意欲を大切に、本校がこれまで取り組んできた「問いをもち、考え、話し合う」授業をさらに広げていく機会にしたいと強く思います。
 「学びの保障」は内容だけでなく、学校という教育の場がもっている「関わり合い、共に学ぶ」ということの価値を第一に教育活動をつくり直すことだと思っています。

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