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「令和の高校教育」に求められる教育プログラムとは

10面記事

企画特集

左から鈴木、笹、今村、進藤、藤田、菅沼(オンライン参加)の各氏(パネルディスカッション)

 (一財)三菱みらい育成財団(東京都千代田区、平野信行理事長)は、12月4日、オンラインシンポジウム「令和の高校教育に求められる教育プログラムとは」〔主催=(一財)三菱みらい育成財団、共催=(株)日本教育新聞社、学事出版(株)〕を開催した。設立後、第1回目のシンポジウムとして有識者の基調講演とパネルディスカッションを実施。助成採択校をはじめとする探究学習の好事例や成功のポイントも紹介した。

生徒を主語にした高校教育へ
「学びたい」思いを満たす場を
主催者挨拶・基調講演

 同財団は、三菱グループが創業150周年にあたり、未来を創造する若者への教育プログラム支援を目的に、2019年に設立。高校分野では「生徒の心のエンジンを駆動させる教育プログラム」をテーマに、「探究学習プログラム等」を推進する高等学校・高等専門学校105校に対し助成を行っている。
 シンポジウム開催にあたり、平野信行理事長は「時代の大変革期である今、高校教育システムを21世紀型にすることがゴール。現場をサポートし、あるべき教育の姿を考え、社会や政府に意見発信したい。本会はその試みの一つ」と挨拶した。

 続いて、独立行政法人教職員支援機構理事長の荒瀬克己氏が「生徒を主語にした高等学校教育へ」と題して基調講演を行った。
 中教審の高校ワーキンググループで主査を務めた荒瀬氏は、新学習指導要領の総則から「主体的・対話的で深い学び」を解説。高校生がキャリア形成の視点を持ち、見通しや仮説を立てながら学習活動に取り組むことや、自己と向き合うことを含めた対話、各教科で探究型の学びを経験する中で、自立した学習者に育てることが重要だと強調する。
 「生徒はきっかけがあれば、学びたい思いを発露し自分の学びをデザインしていく。その内発を促す学びの場と機会を提供することが高校教育に求められている」と語った。
 視聴者からは、探究的な学習の際に「生徒の文脈は千差万別。教師はどう対応すればよいか」と質問が寄せられた。荒瀬氏は「理数探究」などで複数の教員による評価が想定されていることを指摘。「多面的な指導が必要。地域人材など、生徒の学びを支える多様な視点も重要。教師はそのコーディネート役になって欲しい」と、今後の高校教師像も示した。


荒瀬 克己 独立行政法人教職員支援機構理事長

「自分事化」「発表の場」
好事例のポイントを分析

 続いて、同財団の藤田潔常務理事が助成プログラム採択校の視察から見えてきた「グッドプラクティス」のポイントを解説した。
 採択校の探究学習は、大学の学びに近い「知的探究型」と、地域課題を深堀りする「課題解決型」の2タイプに分かれるという。
 いずれも、

 ・生徒が問いを「自分事化」している
 ・発表の場がさまざまにある
 ・学校外の社会人がかかわっている
 ・校内推進体制が機能している

 この4つが満たされると生徒の「心のエンジン」が駆動し、将来の見通しが広がるとした。着火点は「本人の興味・関心」「行動や実践」が支えるという。藤田氏は「探究学習はスクール・ポリシー、スクール・ミッションにも通じる。ぜひ改良を続けてほしい」と採択校にエールを送った。


藤田 潔 一般財団法人三菱みらい育成財団常務理事

パネルディスカッション
「令和の高校教育に求められるもの」

 後半は東京大学および慶応義塾大学教授の鈴木寛氏をモデレーターに迎え、高校と大学、NPO、企業それぞれの立場から高校教育への提言を集めた。
 全国普通科高等学校長会事務局長の笹のぶえ氏は、「高校の魅力づくりは進学実績だけではない」と、校長を務めた東京都立三田高校の「探究学習」を紹介。探究で教員の業務が増大しないためには、チーム作りとその継承がポイントで「各教員がエキスパートであるよりも進行役であるべき」と述べた。
 菅沼尚氏は長野県教委時代に県独自の探究プログラム「信州学」の創設にかかわった。現在、校長を務める長野市立長野高校では「本当に生徒が自ら学べるよう、外部人材との連携を深めたい」と、実践上の課題を挙げた。高校生の支援を大学で単位化する、地域人材の組織化など、学校外の教育資源を組織的に活用する必要性に触れた。
 高大接続に積極的な大阪大学副学長の進藤修一氏は、今の高校生は探究型学習に慣れつつあると見る。「大学側も講義だけではなく、ディスカッションやPBL型の授業を取り入れないと学生の表情が曇る。高校とは違う、大学ならではの要素を加えることもできるはず」と、大学にも変化を求めた。
 教育NPOの先駆けであるカタリバ代表の今村久美氏は「探究する意義への理解が、子どもや保護者、教員に広まっていない現状がある」と指摘する。探究学習の全国大会を企画するなど、その有用性を実感できる仕掛けを提供しているという。

 「高校生活のあいだに1回でも考え抜いて楽しかった経験をすることは、長い人生を生きるうえでレジリエンスの獲得につながる。それが探究をする意義」と語った。
 鈴木氏はパネリストの発言や、前半の基調講演を受けて「探究の評価は抜本的に変えなければならない。結果ではなく、紆余曲折や試行錯誤のプロセスを評価するようになるべき」とまとめた。
 大学生から社会人まで幅広い年齢の人材が探究に関わり支援することが、高校生の心のエンジンを駆動させることにつながるとし、産学連携の学習支援プラットフォームの可能性を示唆。探究学習が高校教育の改善、そして次世代育成のキーになることを確認してディスカッションを締めくくった。

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