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学校管理下での子供の脱水症を防ぐには

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十河 剛(そごう・つよし) 済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科部長

 熱中症は、暑い環境下で体の脱水状態が進んだかたちで起こる。しかし、症状が出るまで気づきにくいのが脱水の怖さ。特に子供は代謝が活発なため、教員が配慮する前に体内の水分・塩分が不足している場合がある。そこで、学校管理下での子供の脱水症を防ぐポイントについて、済生会横浜市東部病院の十河剛部長に聞いた。

水筒持参には塩分を補給できる飲料を
 気温が高くなると体は発汗によって体温を下げようとします。その汗には、水分だけでなく塩分も含まれており、この両方が失われることで脱水症になります。イメージしやすいのは、車のエンジンの冷却水がカラになり、オーバーヒートを起こした状態です。つまり、汗をかいても体を冷やすことができないなど、体温調節が利かなくなり熱中症を引き起こす原因になります。
子供の場合、ほとんどは夏の時期にスポーツで大量の汗をかき、水分や塩分が体外に出てしまうことで脱水症になることが多く、秋口でも学校行事などで水分を摂らない時間が続いたときに起こっています。
 問題だと思うのは、熱中症対策として水筒を持参させるときに、いまだに水かお茶のみに限定している学校が見受けられることです。また、水分補給していたにもかかわらず部活後に熱中症を発症したケースでも、「お茶しか飲んでいなかった」という話をよく聞きます。
 特に夏場は塩分を補給してあげることが重要になることから、学校の常識にとらわれるのではなく、子供の健康を守るために何が必要かを重視して、スポーツドリンクや経口補水液を持たせるようにしてください。

子供が飲みたいときに飲ませてあげる
 もう一つ大事になるのは、授業中などを含めて、子供が飲みたいときに水分補給できる環境を整えてあげることです。以前、小学校の体育授業でどれくらい汗をかくかを実験したら、それほど暑くない天候でも梅干し1個分くらいの塩分が出ることが分かりました。それを考えると、こまめな水分補給は欠かせません。また、天気予報だけだと現場の環境とはズレが生じるので、熱中症計で計った暑さ指数を参考に活動制限などの対策をとっていくことが大事になります。
 さらに、熱中症になりやすくなる要因としては、睡眠不足や朝食の欠食があります。たとえば朝食を摂ることは、栄養はもちろん、水分と塩分を補給していることになるからで、それを摂らないと登校時には脱水ぎみになっている可能性があるからです。

脱水時の治療に有効な経口補水液
 暑い環境下にいるときやその後に、だるい、頭痛がする、ふらふらする、顔が赤くなるなどの症状が起きたら、すべて熱中症と考え、早期にケアをすることが大事になります。その場合、自分で水分補給ができるようなら経口補水液を飲ませてください。
 経口補水液は、スポーツドリンクよりも塩分濃度が高く、糖分を抑えた体液に近い成分のため体の中にしっかり残り、脱水時の治療に効果的です。ここ数年は保健室に経口補水液を常備している学校も多くなりましたが、体調を崩したときにすぐに摂取できるよう、スポーツ中の現場に持っていくことが重要ですね。

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