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一刀両断 実践者の視点から【第428回】

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高齢者の逮捕と道徳

 《近隣住民「けんかは一切しない良い夫婦だった、相談に乗ってあげれば…」86歳夫が介護疲れで妻の首絞め死亡か 殺人未遂容疑で逮捕 練馬区》(TBS NEWS DIG Powered by JNN)という見出しの記事は様々な要素を含んでいる社会課題を露呈している。
 こうした報道は以前から耳にするが、他人事ではなく、身内でまたは近隣でも起きる事案と捉えたい。
 足が悪くなると急激に介護負担は増える。また、そこには経済力の問題がからみ、どこに相談すればいいのか等も分からず戸惑うものである。
 もっと相談に乗っていたらと近隣の方が答えていたがこの声掛けがコロナから更に出来にくくなっている。
 向こう三軒両隣という声掛け文化も聞こえなくなり、個々の家庭に介入しない方がいいとなってしまった風潮が蔓延している気がする。
 物のやり取りや回覧板で立ち話をするなどの何気ない会話が変化を感じられる重要な機会となる。家族の中に子供の存在があるがそこが機能しなかったのかが見えない。
 喧嘩のない仲の良い夫婦に起きた悲惨な事件と報じているが、近隣、行政、親子、親類、友人などの視点からこの事件は何故防げなかったかを中学生の道徳で扱う事が必要と思う。
 それは今そこにある身近な社会問題だからである。他の教科では学べないエリアの内容ではないだろうか。
 道徳で人と社会を幸せに、が私が所属するモラロジー道徳教育財団のモットーになっている。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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