学校経営 実態に応じた路線変更は当然
4面記事
東京・千代田区立麹町中学校 下
長田 和義 前校長(武蔵野大学教授)
2回にわたり千代田区立麹町中学校の現在の動きを紹介してきた。今回は工藤勇一校長の後、令和2年度から4年度まで務めた長田和義校長(武蔵野大学教授)に自身の学校経営を振り返ってもらう。
工藤元校長の実践、コロナで検証難しく
授業参加は「自由」でなく「基本」に
全員担任制、学年主任の負担増大
私が麹町中学校に赴任したのは、コロナ禍の最中であり、まずは今後の教育活動をどうするかが最大の課題でした。既に全国的に知られる存在になっていたため、例えば、入学式を実施するかどうかという判断さえも注目されているように感じました。
前任の工藤校長とは、地教委の時代に上司と部下という関係で、「路線を継承する」という期待感を持つ方もいたように思います。
しかし、校長として、自分自身の目で各種の活動を確認・検証し、継続すべきものは残し、効果の薄いものは廃止や改善を図っていくつもりでした。また、地域のリソースを活用した、千代田区だから、麹町中だからこそできる教育活動を創出したいとも考えていました。民間企業やさまざまな業界で活躍する保護者等との連携です。しかし、コロナ禍の影響で、教育活動が実施できなかったり、制限があったりと、教育活動の検証そのものができない状態が続きました。
学校が再開した6月以降の印象は、「普通の中学校とは違う」というものです。
前年度末に服装の自由化についての説明があったとのことで、登校する生徒は、髪形も服装もバラエティーに富んでいました。自分の思いを表現することに抵抗感がなく、伸び伸びと学校生活を送る生徒が多かったように思います。
教職員の動きを見ていると、生徒の行動に課題を感じても、その場で声を掛けるのをためらう場面もありました。生徒に手を掛ければ掛けるほど、「自律」がそがれるとの思いから、生徒へのアプローチに悩んでいたのだと思います。
そのため、生徒の状態を見ながら、必要な「指導」「支援」は機を逃さず行うことを確認してきました。授業への参加も生徒に委ねられている雰囲気があったと聞いていましたが、授業については、「参加が基本」としました。
教育活動全体を見てみると自分の興味・関心や強みを、「伸ばすことができる子」にとって、価値のある取り組みが展開される一方、乗り切れない子もいると感じました。そのため、コロナ禍を機に、改めて教育効果や今後の継続性の観点から中止したものもありました。
当時のコロナ対策の中では、他者との接触の機会を減らすことが大きな課題となっていました。そのため、生徒数の増加もあり、更衣室という狭い空間での更衣を回避するため、体育の授業も動きやすい私服で行うようにしました。服装については折に触れTPO(その場にふさわしい服装を選ぶこと)を意識するようにしてきましたが、運動にふさわしい服装の選択が十分ではない状況が見受けられました。体育時の服装については保健体育科の教員と話し合い、体育着または体育着に準じる服装を具体的に示し着用する方向性を確認しました。
麹町中は、1学年3、4クラスの規模で推移していましたが、工藤校長の在任中に増加し、私が赴任した令和2年度の1年生は6クラス編制になりました。さらに、年度途中の転入が全学年であり、「麹町中に行けば、全てがうまくいく」との期待感があったように感じます。しかし、生徒数の増加とともに、配慮を要する事柄も増え、教職員の負担は増えました。また、教室も不足し、特別教室を通常教室に変えるなどさまざまな対応が求められました。
視察では全員担任制の実情がよく聞かれます。私個人の考えですが、1学年4学級規模までであれば、学年主任を中心に、生徒への対応も比較的違和感なくできるでしょう。しかし、それを超える学級数になると学年主任の負担が大きくなるように感じます。実際に5クラス以上の学年運営では学年主任のリーダーシップとさまざまな工夫、配慮により運営がなされていました。
堀越勉校長とは、前任の千代田区立神田一橋中学校の時代から連絡を取り合ってきました。生徒の状況や学校の課題は常に変化します。堀越校長は、今の麹町中学校の現状を丁寧に分析し、必要な策を講じていると思います。目的を達成するための手段に唯一絶対のものはありません。目の前の生徒や保護者の実態に応じて、取り組みを変化させるのは当然のことと考えます。