子どもの脳の多様性に応じた 言語・コミュニケーションの指導と支援
12面記事
宮本 昌子 著
複数障害と関わる「ことばの教室」
通級による指導の中の言語障害に対応した、いわゆる「ことばの教室」を取り上げ、一般的な言語発達の解説(第1章)や、小・中学生を対象にした「構音障害」「吃音」「言語発達の遅れ」「語用の遅れ」「音声障害」など障害の態様に応じた支援方法(第2章)が述べられていく。
ただ、本書でも扱っているが「言語障害と他の障害の併存について」(第4章)、「場面緘黙とは」(第5章)、「複数の障害を重複する児童への指導」(第6章)など、他の障害との関わりから要因が見極めにくいケース、地域事情により障害に応じた通級による指導が受けにくいケースもあり、「言語障害」としての対応だけでは改善しにくい現状にも触れている。
適宜挿入される、通級指導担当のベテラン教員や障害のあるわが子に寄り添ってきた保護者へのインタビューを読むと、「通級」の世界の奥深さを実感させられる。
同時に、小・中学生約20万人が通級による指導を受ける現状に、子どもや保護者にも「通級」の世界を広く知ってもらうことの大切さも教えられた。
特に、言語障害通級指導教室の今後の在り方を探る研究者との対談(第7章)は、行政関係者にとって地域による格差、複数の障害のある児童・生徒に対応できる通級指導教室の制度、仕組みになっているか、考えさせられる内容になっているのではないか。
(2200円 金子書房)
(矢)