授業時数調整の裁量拡大 否定意見が上回る 学芸大・大森教授が調査
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教育課程の学校裁量の拡大について、教科間で授業時数を融通できるようにする文科省案に対し、学校現場では否定的な回答が肯定的な回答の2倍に上った、とする調査結果を東京学芸大学の大森直樹教授が発表した。授業時数を調整するための裁量よりも標準時数の削減を求める声が多かったとしている。
調査は5~6月にインターネットで実施し、小・中学校を中心とする教員5732人から回答を得た。次期学習指導要領を議論している中央教育審議会の特別部会で文科省が示した、教育課程の学校裁量の拡大の方向性について尋ねた。
特定の教科の授業時数を減らして他教科に上乗せできるようにする案について「賛成」「どちらかというと賛成」が合わせて27%、「賛成しない」「どちらかというと賛成しない」が57%で否定的な回答が2倍になった。自由記述では「国語、算数の時数が増え、学校がますます息苦しい場所になる」(小学校)などの声が寄せられたという。
子どもの実態に合わせた個別の学習支援をできる時間を設ける案については、肯定的に答えた教員が48%で、否定的な回答は38%だった。一方、「学力的に厳しい子どもにとって必要だが、学力格差を強調することにならないか懸念がある」(小学校)などといった意見もあった。
文科省案では、授業時数内でありながら授業改善のための教員の研究活動に充てられる時間をつくるとしている。これに対する肯定的な回答は48%、否定的な回答は36%だった。
否定的な回答も多かった理由について大森教授は「教育委員会や学校の事前の計画と判断が前提となることが、『研究のための研究』をもたらしかねないと警戒されたのではないか」と分析した。
6月30日に開いた記者会見で大森教授は、学習指導要領を精選して標準時数を現在の1015時間から小学校875時間、中学校945時間に削減することと、特別活動の標準時数を70時間に増やすことを提言。標準時数を維持する姿勢を崩さない文科省の提案は「時数確保」のための裁量拡大だと批判した。