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社会科「問題解決学習」授業デザイン

12面記事

書評

宗實 直樹 著
実践記録基に具体的進め方示す

 主体的・対話的で深い学びの授業は、問題解決学習の形態だろう。その中でも社会科は、自分たちが生きる社会と暮らしを結び付けて問題を見いだし、解決に向け考え合う問題解決学習として研究が進んできた。では「問題解決的な学習」との違いは何か。著者は「問題解決的な学習」を無自覚に進めていないかと問題提起し、社会科の問題解決学習の成り立ちを振り返り、その本質と可能性を論じ、問題解決学習を深めるための勘所や授業実践記録から具体的な進め方を示す。
 教育現場で実践する人には、第2章の「社会科の問題解決学習における17の勘所」が大変勉強になる。著者が今も教壇に立つ実践者ならではの言葉が重みを与えている。例えば「『立往生』と『抵抗』を大切にする」では、子どもが行き詰まりを感じて立ち往生する瞬間、そこに学びを深めるための不可欠な要素があり、学びが動きだすための助走という。自分ごととして関わっていこうと真剣に考える姿を大事にしたい。加えて、第3章も授業展開の実際として2単元が紹介されているので参考になる。
 評者は、社会科問題解決学習の成り立ちから多面的に問題解決学習を考察された第1章に読み応えを感じた。自ら問い、他者と対話をしながら、納得解を探し行動していく学びの力を育むための営みを、問題解決学習とする本質的な価値を考えさせられる。多くの教育関係者に手にしてほしい一冊。
(2420円 明治図書出版)
(藤本鈴香・大谷大学教職アドバイザー)

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