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教員養成の現場から【第1回】

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下がる採用倍率

 この秋、上越教育大学学校教育実践研究センターにおいて「指標に基づく資質能力向上シンポジウム」が行われた。教育委員会関係者や小・中学校の管理職など100名以上の参加者で会場は埋まった。
 シンポジウムは、鳴門教育大学前田洋一教授の「教員のキャリアアップ~学び続ける教員を目指して」という基調講演で始められ、その後3会場に分かれて分科会が行われた。分科会の発表者は、秋田県、千葉県、東京都、新潟県、福井県、山梨県、岡山県、仙台市、新潟市の各教育委員会の研修担当者などである。
 分科会では、それぞれの教育委員会が若手教員を育てるための工夫や育成指標の活用、研修の持ち方などを発表し、熱心な質疑が行われた。シンポジウム後の情報交換会でも熱い意見交換が行われた。
 2学期中盤の週日にも関わらず多くの教育委員会関係者や学校の管理職が集まった。その背景には、若手教員をどう育てればいいのかという現場の危機的意識がある。
 ここ数年、全国的に若手教員が増加している。教員志望者が減る中で採用枠が増加し、結果として教員採用倍率が下がり続けている。2018年、新潟県の小学校教員採用試験倍率は1.2倍にまで落ち込んで関係者に危機感を抱かせた。
 2019年度も全国66県市のうち、半数以上の県市で1次選考合格倍率が下がっている。3年連続の低下である。「受ければ受かる」という状態が続いており、若手の資質向上は学校現場や教育委員会では猶予のない問題となっている。軒並み合格者が出るため、講師が払底する等の問題も起きている。
 このシンポジウムは文部科学省の「教員の養成・採用・研修の一体的改革推進事業」の一環として行われたものである。上越教育大学では3年連続でこの事業を受託し、全国を対象に調査研究を行い、その内容を受けた若手育成セミナーを進めている。
 調査研究1年目は、「全国的に増加している若手教員の資質・能力向上の鍵は中堅教員の関わりにある」という結論を導いた。2年目は、「全国的に中堅教員の層が少なく、管理職や教育委員会が苦慮している」ということが明らかになった。3年目、「管理職や教育委員会が指標をどのように活用し、若手・中堅教員を育成しようとしているか」に着目して調査研究を行っている。そして、特色ある取組を行なっている県市の教育委員会に呼びかけ今回のシンポジウムになった。次回から、これらの内容を追って解説していく。

教員養成の現場から