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大久保俊輝の「休み中に考えたい学校問題」【第3回】

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講師の引き受け手はこんなところに

 「いろいろと考えてます。お時間いいですか?」と、昨年卒業して現在、体験型塾に働いている元学生が訪ねてきた。
 話を聞くうちに、他の仕事は分からないのでと、ポツリポツリ勤務の実態を話し始めた。驚愕した。
 「始発、終電で働き、月の手取りが19万、親も心配しているので、先生のことを思い出して相談に来ました」と、正直に伝えてくれた。
 なぜ、この会社に入ったのかと訪ねると、企業理念がしっかりしていたからと答えた。辞めようした先輩は皆説得されている、と。

 残業手当は定額見込み額のため、どれだけ長く働いても、それに見合う手当は付かないし、先輩からは最初は、皆そうだよと話されるそうだ。
 これが当たり前で仕方ないのかと思っています、と苦笑いを浮かべた。
 素直で明朗な性格で、教師にしたい資質にあふれているのに、その会社でうまく使われていることがはっきり分かった。学生時代とは違って、働き始めるとそれぞれ離れるため、なかなか相談はできない。

 そこで、臨時的任用職員の待遇データを見せて説明すると、客観視できたらしく表情が変わった。
 講師として働けるようにさっそく手配をすることを伝えて、翌朝、古巣へ状況を確認した。「今すぐにでも来て欲しい」と大歓迎の話となった。
 こうしたケースはあまりに多い。3年で一般企業の離職率は30%、教員は1%に過ぎない。
 本学で担当する生徒・進路指導論は、教師となって生徒に教える学びだが、自らの選択も含めて賢く育てねばならないと痛感した。
(おおくぼ・としき 亜細亜大学特任教授。千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

大久保俊輝の「休み中に考えたい学校問題」