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大久保俊輝の「休み中に考えたい学校問題」【第39回】

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「困難校」に赴任する喜び

 校長になるときに教育長に一つだけお願いをした。若輩故に皆さんが行きたくないと思っている、いわゆる困難校への配属を希望した。その通りにして頂いた。
 学校事故でPTAの会長、副会長が相互に議員を付けて争っていた。双方は弁護士窓口で話が出来ない。市から要望を聞かれたので、校長室は地域との接点、難題を解決する主戦場になるのだから汚くては勝負が出来ない。剥がれた壁紙を修復して欲しいと依頼した。

 数日後には、業者が入り見違えるようになった。しかし、その要望が妬みを買い、赴任して早々に壁紙を変えるなんて、とんでもない奴が来たと教委で噂になったらしい。くだらない。本題はそこにはない。校内正常化である。
 裁判所とのやり取りから、落としどころの金額を提示し、覚書を書いて双方へ示した。他の複雑な案件も片付き始めた頃、他市へ異動を言い渡された。こうした人事はよくある。課題の多い学校には他市から来た校長を配置して様子を見るのだ。

 火消し役を転々と楽しませて頂いた。昔、困難校や大規模校の校長は給与が高かった。今は単学級であろうが児童数が千を越えていようが同額である。こうした困難校で生徒指導を担当する事は、学級担任の視界に入らず腹も決まるし、汗することになる。時を経て、皆が自力を発揮し、見上げるような成長を遂げている事に勝る喜びはない。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

大久保俊輝の「休み中に考えたい学校問題」