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大久保俊輝の「休み中に考えたい学校問題」【第49回】

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論説・コラム

「同苦の心」をはぐくむには

 自分がウイルスに感染したら、周りはどう対処するだろうか。家族や同僚や友人やお隣さんが感染したらどう対応するのか。既に、この域に来ている方が身近に増えている。
 お宅の近くに感染した人がいるらしいわよ。怖いね。そういえば、Aさんの家辺りに消毒に来たらしいわよ。と、迷惑そうに眉間にシワを寄せて、大げさに話す人がいる。

 こうした人は、自分が感染しないと自分の言動に気が付かないのである。私の知人の映画監督も感染して数日で亡くなった。身内さえも死に目に会えなかったと教えてくれた。その悲しみは計り知れない。
 国や自治体の財政支援が間に合う店舗等はまだ救われるかもしれないが、やむなく廃業を決めざるを得ないかと思っている人が日に日に増えている。その落胆が、国や自治体には伝わっていない。

 日銭で苦しんだ経験のない方ばかりだからとも思える。よって、いかにデータを集め専門家が判断しても、現実とかけ離れた政策になってしまう。御曹司議員や地元名士の関係する自治体職員が日銭の辛さを到底理解はできない。
 こうした経験を切実に体験させる為には、キャリア教育の中に、より実践的な内容を組み込み、苦労や苦しさまでも体感させるレベルの学びをさせないと、机上の空論となりリーダー達のやがてリーダーになる人達の感覚を変える事は出来ない。すなわち「他人事」にしない。「同苦の心」の滋養である。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

大久保俊輝の「休み中に考えたい学校問題」