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大久保俊輝の「休み中に考えたい学校問題」【第75回】

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仲間が去っていくとき

 「実は鬱のお薬を飲んでいました」と、同僚が話してくれた。仕事が滞るとトイレに駆け込み、出てこられない状況になるため、噂も広がっていった。改善が見込まれない場合、退職や転職を相談できる人間関係が存在しているかがポイントになる。
 行政に担当者がいても、あまり機能しないようである。何故か。専門性や経験、ましてや人間性がその域にないからである。役職や役割に関係なく、気にして、声をかけ、意図的に関わっていける自然体の存在が必要なのである。
 このスタンスを何故か私は身に付けることができた。教えられた事ではない。組織からの圧力や左遷などの理不尽な経験があったからこそ、相手の立場がよく理解出来るのである。組織に迎合せず、馴染まない為、様々に除外され、孤独に追いやられる貴重な経験であった。

 少年院の子どもたちが捨てられた犬を選び、育てるなかで、自分を見つめ信頼を探り、更正し、再入所をゼロにした実践を紹介した「ドッグ・シェルター」という題名の本がある。よく考えれば完全な発達をしている人間はいない。全ての人間は発達し続けていくのである。
 こうした仲間が去っていく職場にいた経験はないか。そしてその去った同僚と今も連絡を取り合っているか。幸せであれと祈りつつ。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

大久保俊輝の「休み中に考えたい学校問題」