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コロナ時代に考えたい学校問題【第50回】

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「不思議に命、永らえて」

 見えないものへの不安は計り知れない。ウイルスしかり、人の心しかりではないだろうか。よく考えてみると、見えないものがほとんどと捉える事が出来る。
 「連合艦隊」という映画の監督で知人の松林宗恵先生が「見えないものを見えるように捉える。見えるものから見えないものを考える。それが学びだよね」と、諭すように語られた事を思い出す。また、色紙には、「不思議に命、永らえて」と記されていた。まだまだと思った矢先に逝かれてしまった。
 その映画への思いを先輩に伝えていたところ、戦争賛美はやめろと一喝された。最後まで話を聞かない上官への絶対服従で多くの命が犠牲になった史実が重なった。
 監督は、「戦争ほど悲惨なものはない」と、いつも口にされていた。真実を私達はどのように伝えるべきなのだろうか。
 私の父は、「栄」という名のエンジンを製作していた。零戦などに搭載されたエンジンである。戦地では、暗号が敵に解読されている事を上官に何度伝えても受け止めてくれず、あの山本五十六長官の死を防げなかったと亡くなる間際まで話していた。
 父は、運よく生き延びた事で今の私が存在し、子ども達がいる。まさに不思議に命永らえてなのである。残されたものの使命は、極めるならば、いまだに収まらない戦禍を終息させることにある。それは教育でしか成し得ない。一人は僅かな力ではあるものの、「諦めない対話」を「平和への最強の武器」として、人命人権の尊重に徹する教育が必要なのではないだろうか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題