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コロナ時代に考えたい学校問題【第77回】

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秋に天寿

 過ごしやすくなったこの時期に、高齢者が逝かれる事が多い。夏の過酷さを乗り越えて一息ついた所に訃報は入る。4年前に、私の両親も、94歳で父が、その最後のラブレターを手にした母が翌日91歳で旅立った。その日も、この時期らしい穏やかな日であった。
 存在がなくなるように見えるため、その魂は何処へいったのか、この空間に溶け込んでいるのかと慌てて探す自分がいた。親は原点であり、親なくして自分は存在しない。両親をいっぺんに失うという衝動に耐えられるのかと、鏡に映る自己に問うた事を思い出す。
 ふと、命あるものへのいとおしさがわき上がる。それは、草にも花にも虫にもである。
 親孝行をしたと周りは過分に評価をするが、心配を掛けて親の命を萎縮させ、苦しめた後悔はとても償えるものではない。
 失って初めて知るその偉大さと我が使命の何たるかを思索する今がある。
 2人を揃って荼毘に付した日に、縁深く、これからの新たな職場に向けた面談が行われた。これも親の導きのように感じられて仕方がない。父母より教わる無言の教育に、私共はもっと目を向けなければいけないのではないだろうか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題