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コロナ時代に考えたい学校問題【第90回】

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辞めない職場を作るには

 「辞めない社員の育て方」について、多くの企業経営者が集まる講演会でお話をさせて頂くことが、昨年から頻繁になってきている。
 せっかく採用してもすぐ辞めてしまうのは何故なのか、経営幹部は悩んでいる。就職後、3年以内に離職する割合は一般企業が3割、教師の場合は0.1割程度となっている。
 ブラックな職場だと言われても、一般企業と比べるとあまり辞めない教員にヒントがある。講演会では演習を交えて体感的にご理解頂いている。
 ただし、辞めた方が幸せな人には退職を促し、向いた仕事へと導いてきた。
 忙しくなったり、長年勤めていたりすると、自分の経験や思い込みが色眼鏡となっているために、フラットに相手を見ることが出来なくなってくる。こうした時期を経てしばらくすると退職者が出始める。よく考えれば、当然の結果なのである。

 私の父は名の知れた企業の管理職をしていた。新聞の求人広告で入った作業員からの叩き上げである。酒が飲めない為に宴席は辛かったようである。
 ある時、皆を喜ばせようと、ドジョウすくいや腹踊り、さらにはバナナの叩き売り口上を面白おかしく身に付けて場を盛り上げた。私も子どもの時にそれを見て、間違っても自分はこうはなるまいと決意していたが、気づくとやっていた。「親近感」と「度量」が魅力となり、「丁寧」で「誠実」な言動が「かっこよく」、皆の力が和合していったんですと、父を知る方が教えてくれた。
 「あの人に会いたい」という思いが、人が辞めない一番のポイントと私は感じている。そして、何故か職場結婚も増えるため、ドジョウすくいの出番も増えてしまうのである。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題