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コロナ時代に考えたい学校問題【第93回】

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心を「誠意」で鍛える

 絶頂期の俳優が交通事故を起こし、逃げ去ったと報じられている。釈放された姿はあまりにも哀れと思えた。まさに有頂天から地獄へと真っ逆さまに落ちた感がある。
 同じ状況になったら「逃げるか」「逃げないか」を複数の大学の学生に聞いてみた。半数以上は「人が見てなかったら、逃げるかも知れない」と回答した。これが今の青年の偽らない意識だとすると、今回のような当て逃げは二人に一人がやることになる。
 これがこれまで行って来た法令遵守や倫理や道徳に関する教育の結果だとしたら、あまりに不甲斐ないものではないだろうか。
 「倫理や道徳を表だっていくら話しても、実際の行動に現れないのだから意味がない」と、米国で長く生活して帰国した恩師がキッパリと話された。
 信念を持ち行動する素晴らしい人々には、道徳や倫理が染み込んでいて、取り立てて言わないまでも崇高な行動になってしまう。
 この有望な青年俳優がおかした行為の代償として、この青年の未来が確実に変わってしまった。そして、それは事故の間際まで考えもしなかったことだろう。その事故の瞬間に人間の本性が余すところなく現れてしまう。恐怖と立場と未来とが様々に交差したと思われる。「慢心は天界に住む」と先人は諌めているが、過ちをおかした後の行動や判断までも現在の道徳や倫理が浸透出来ていない証のように私には思えてならない。いざというときに自らを律する事は、自己と対峙した誠実さから現れるものである。
 これを読んでいるあなたは、その事故の瞬間に何を思い、どう行動するだろうか。日頃から心を「誠意」によって鍛え上げておかないと、必ず逃げることになるだろう。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題