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コロナ時代に考えたい学校問題【第138回】

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学童保育に目を向けよ

 知人の中に、元教員で市議会議員を務めた後、現在は学童(学童保育、学童クラブ)の仕事をしている方がいる。表舞台から忘れ去られやすい学童の実情を訴えていた。
 学校というと、高等学校や小中学校をイメージしやすいが、特別支援学校を言い忘れる事は少なくない。ましてや学童までを意識している校長や職員は稀ではないだろうか。
 市内の学童の職員を対象にした講演に御指名を頂き、80名近くの職員を相手に2時間の講演というか演習を行ったことがある。それはコロナ禍の一年前だったので、グループディスカッションを多く取り入れることができた。
 きっかけは、かつて勤務していた学校の近くの学童の責任者が、「特に反抗する子ども達の指導で困っている」と相談に来られたことだった。それから数年後のオファーであった。
 会場に入った瞬間、空気が重く笑顔が見られなかった。担当は市の職員で、幼児教育や義務教育の現場に居た方は少なく、いわゆる素人の若者とその職を長年パートでやっている方達で、正規の職員は市職員数名だけであった。
 そのパートの待遇は、改善されることなく私から見ても劣悪と思えてならない。
 現在、待遇は変わらないまま、コロナ禍に見舞われているからたまらない。私の子ども達も学童へ通っては居たが、秩序も乱れ、目が行き届かない状況は今も変わってはいない。
 校長の頃に帰宅する途中に必ず学童へ顔を出した。すると、いつも数名の児童が残っていた。一緒にしばらく遊んだ事もある。疲労困憊で命を削るように勤めている職員の苦笑に頭を下げて校門から出たことを今も鮮明に思い出す。
 教育の連携と言いながらも、明らかな分断がそこには感じられた。光の当たりにくい所へ光を当てるのが、SDGsが掲げている「誰1人取り残さない」という理念ではないだろうか。もちろん子どもへの支援は優先すべきであろうが、それよりも疲労困憊のパート職員の実態を把握し、環境を整えるべきではないだろうか。行政が打ち出す一連の施策にも学童が視野にあるとは思えない。何故なら学童はきわめて濃度が高い「密」の空間だからである。学童に来なければ、実感は湧かないだろう。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題