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コロナ時代に考えたい学校問題【第148回】

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教員採用試験と「ブラック職場」

 教員採用試験の競争率が低下している。報道では、最低倍率を強調しながらも要因を過重労働としている。ここに大きなズレがある。
 長時間勤務となっている仕事の内容は実に曖昧にされている。改善は図られている。私が初任の頃は午前様の時もあった。しかし、過重労働とは思わなかったし楽しかった。確かに時間時間でスパッとできる仕事とは言えない。
 仕事柄、情も入るし、使命も感じるのだから、行政のように時間で終わりにはならない。ある意味、警察や消防のような24時間体制である。
 具体的には、退勤後に連絡が入る。苦情か、事故か、万引きか、行方不明かと胸騒ぎがする。特に万引きかや行方不明となると頼るところがなく担任に連絡が来る。
 万引きは、被害にあった店から家庭に直接は連絡しない傾向がある。評判を落としたくないという事情らしい。また、子どもが行方不明になると教員総出で探し回る。学校をブラックな職場と言うのなら、これらの対応を誰がするのか。捜索願いを出すか出さないかの相談も受けて判断を迫られる。
 「児童生徒が校門から出たら、学校は関係ない」と出来ないようにしているのは学校ではない。そうしたことにならないようなシステムを作らないのは誰なのか。
 やらないですむ仕事を求めているのは誰なのか。学校での仕事が子ども達のためになると感じた職員を「時間だから退勤しなさい」と言うのは忍びなく「早目にね」程度しか言えないものである。
 よって、平均的な仕事と共にそれ以外は退勤までにできる仕事をチームでシェアできたらと私は指導して退勤時間を早め、親からの苦情は楽しみながら一人で処理した。勿論自らも年休もしっかり取得し定時退勤に努めた。また、校長裁量で休ませたり退勤休養もさせた。
 見過ごしがちな若者のだらだら勤務、すなわちルーズさにつながる動きは意図的に制御した。やればできるものである。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題