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コロナ時代に考えたい学校問題【第164回】

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「正しく疑う」の必要性

 「信じることの大切さ」を学校では教えていて、肝心な「正しく疑うこと」を教えない。しかし、社会に出ると「疑わないと生きていけない現実」がある。このギャップを誰がどこで教えているのだろうか。誰もが綺麗事にして曖昧にしてきたのではないだろうか。
 これは近隣で起きた事件である。信じていた友達が二人だけの話を他の友達に漏らしていたことが分かり、女児が不登校になった。信頼が一気に崩れたからだった。追い討ちをかけるように、父親が、借金の保証人になった為に夜逃げした事がしばらくして知らされた。人のためにという優しい心根の家族を襲った現実を私は目の当たりにした。
 可哀相では済まされない出来事であるが、「人を安易に信用してはならないという現実」を学校では教えてはいない。このような人間の正邪を教えることが何よりも必要ではないのか。
 必要なら誰が、何処で、どのように教えるのか。それは家庭でというのなら、親が万引きするような家庭に育った子には正邪は通じない。ならば指導はしないのか。この現実の中で人間関係の実際を学校がきちっと教えるべき事であり、綺麗事にして考えさせることではない。教員を育てる大学で教えているのだろうか、私は残念ながら聞いたことがない。
 この女児に「政治家」も「行政」も「大人」も皆嘘つきばかりと言われたら、私達大人は「そうではない」と納得させられるだろうか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題