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交通安全への強い眼差しー交通遺児育英会の使命ー【第2回】

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論説・コラム

貸与型と給付型の奨学金

 「コロナ禍により、厳しい状況が続いておりますが、夢をあきらめず、前進してください。応援しています」(広報紙「君とつばさ」令和3年10月10日号:あしながおじさんから奨学生に寄せられた言葉)
 社会に出るまでに、しっかりした自立性を育てるための修学支援は、多様な広がりを要します。今回からその概要を順次紹介します。
 まずは主な事業である奨学金制度について紹介いたします。
 奨学金の貸与額(一部給付)及び入学一時金(これは進学準備金のいずれかを選択)は表の通りです。

 奨学金、入学一時金いずれも選択肢が3つありますが、それぞれご家計の状況に応じて選択できるようになっています。
 奨学金の貸与対象は、昭和44年(1969年)高等学校および専修学校高等課程から始まりましたが、4年後(1973年)には大学まで拡大、8年後(1977年)には大学院まで、12年後(1981年)には専修学校専門課程、各種学校に拡大し高等学校以上のすべての学校をカバーしました。
 冒頭の奨学金貸与額表の中央の奨学金月額の欄をご覧いただくと、それぞれ学校ごとに下段のカッコ内に給付額を示しています。高等専門学校の専門課程(4、5年)より上の学校に関しては(うち2万円は給付)とありますが、この給付型の奨学金は令和2年度から開始しました。
 育英会創設以来奨学金は貸与型だったのですが、社会人になられてからの返還に苦労される方も少なくはありません。
 そのような苦境にある方に対して返還猶予制度、返還免除制度はありますが、そのような方々のみでなくすべての奨学生について社会人になられてからの返還負荷を軽くする必要があるという認識は強く持っていました。
 コロナ禍に見舞われたのは、そのようなことを考えているまさにその時のことで、遺児のバイト収入、ご家庭の保護者の収入は大きな打撃を受けました。
 あれこれ迷っている場合ではありません。すぐ長期の財政シミュレーションにより、財政上の問題がないことを確認したうえで、給付型奨学金の導入を理事会に諮り、令和2年度初から大学以上のすべての学校を対象に月2万円の給付型奨学金をスタートすることができました。
 この時点では、高校奨学生につきましては、平成22年に公立高校が無償化され、平成26年には私立高校が無償化されましたこともあり、更なる支援の拡大を急務とは考えていなかったのですが、令和3年3月にまとめた交通遺児家庭の生活実態調査で、母親シングル世帯の平均収入が300万円であることを把握しまして、これは無償化された学費はともかくとしても、生活全般を考えたとき支援の拡大を必要とする状況であると判断し、令和5年度初から高校奨学生につきましても月1万円の給付型奨学金をスタートしました。
 その他に私どもでは、学費以外の諸経費について給付型の修学支援をしています。次号で紹介します。

石橋健一(いしばし けんいち)
公益財団法人 交通遺児育英会 会長
1942年生まれ。北海道大工学部卒業後、日新製鋼入社。呉製鉄所エネルギー技術課、本社人事部などを経て、1996年交通遺児育英会出向。事務局長、専務理事、理事長を歴任し2023年6月より現職。

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