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令和7年通常国会質疑から【第8回】

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行財政

 国会では、法案審議の他に、議員の提示した課題に対して政府が見解を明らかにする質疑が行われている。今年6月に閉会した通常国会のうち、教育関係の一般質疑の模様を紹介していく。4月15日の参議院文教科学委員会では、高校授業料無償化に関連し、公費負担の公私間格差を尋ねる質疑があった。

高校への費用投入の公私間格差

 金子道仁氏(維新) 私立高校の授業料無償化に関連しまして、老朽化している公立高校の施設整備の必要性が指摘されています。
 ただ、一つ私自身よく理解できないところがございまして、それは、先日、日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長とお話を聞く中にあって、高校の全日制の生徒一人当たりの教育費の公立、私立の比較をした場合、私立は約百七万円、公立は百三十二万円で、公立の方に授業料等も含めて非常に多くのお金が掛かっている、私立こそ経常助成金の拡充が必要だ、そのような御意見を受けました、公立高校との公費支援格差を埋めるべきだと。
 ただ、この数字が、逆も聞くことがあるんですね。いやいや、私立の方に手厚くて、公立高校は今こそ補充をすべきなんだという、そのようなペーパーも見たことがございます。
 果たして、公立高校、全日制生徒一人当たりの教育費というのは公立高校、私立高校それぞれ幾らなのか。もちろん、どのような条件で設定をしていくのか、普通科だけにするのか、それとも特別支援学校も含めるのか、その辺りで算出は違うと思うんですが、やはり正確な情報がないと、どこまで公立高校の施設整備のために公費を入れるべきなのかという範囲を決めることが難しい、そのように考えるわけです。
 是非、どのような支援が今後必要なのかということの材料となるような、高校、生徒一人当たりの教育費について情報を教えていただけますでしょうか。

 初等中等教育局長 今、金子委員の方から、生徒一人当たりの、どのくらい公費でお金が掛かっているのかという数字をなるべく正確なところを議論のために教えてもらえないかという御質問だったと思いますけれども、ただ、その前提として、我々、私立、公立を通じての同じ土俵での調査というのは残念ながら持ち合わせてございません。
 私立高校というのは、御承知のように、非常にアクセスが、都市部等に展開された良いところにある一方で、公立高校については、教育の機会を確保するという観点から、離島とか中山間地域、生徒数の少ない地域にも配置する必要があると、それに掛かる費用もおのずから異なるということもございます。また、定員割れでも、人材育成の観点からやはりどうしても設置をしなきゃいけないというところもございます。
 したがいまして、生徒一人当たりの公費投入額については、同じ、私立と公立を並べて全く同じように単純に比較することはちょっとできないんじゃないかというふうに考えてございます。
 その上で、その上で、あえて公費の投入額というのを試算をするということになりますと、これは再三申し上げますけれども、同じ土俵じゃありませんので、この数字が独り歩きをするということは、混乱は避けなきゃいけませんが、令和四年度の地方教育費調査、それから「今日の私学財政」、それから令和三年度の学校基本調査など今我々が手元にある調査を分析しますと、公立については、地方教育費調査における学校教育費から地方債など当該年度に間接的に投入されている公費の部分と私費負担に当たる寄附金、授業料、入学金などを除いた上で、そして就学支援金の部分というのは公費で投入していると算入しまして、その場合、公立高校における普通科の一人当たりの公費の投入額は八十六万円。私立につきましては、経常費等補助金、施設整備補助金、それから就学支援金の額を基に試算を行いますと、普通科の私立高校における一人当たりの公費投入額は五十八万円。
 調査の少しこれ土俵が違いますけれども、あえて試算を行った場合の普通科の公立高校における一人当たりの公費投入額は八十六万円、普通科の私立高校における一人当たりの公費投入額は五十八万円という試算となると考えてございます。

 金子道仁氏 ありがとうございます。土俵が違うというのはまさにそのとおりですし、これが全くイコールになるべきだという考え方は私も持ち合わせておりません。
 公立高校の役割、後でも大臣に是非御質問させていただきたいと思っておりましたけれども、やはり変わっていくと思うんですね。その私立高校、つまり民間がカバーできないそういったサービスを公的なところでカバーしていく。例えば特別支援学級、こういったものは民間ではなかなか難しい、そういったところを公立がカバーしていく。専門高校、そのようなことをカバーする。民間でもやっているところはありますけれども、やはり手厚くやるんであれば、そのような人材育成のための学校であったり、また、先ほど望月局長も言われました、過疎地域でも教育機会を残していく、これはやはり公立高校の役割としてどうしても考えなきゃいけないものだと思います。
 そういったところでコストが掛かるのは当然ですので、そこは配慮しつつ、ただ、やはり議論の土台としては、正確な数字が、同じ土俵の上で乗っかって見ていないと、都合のいい数字をそれぞれが出し合うようなことというのは議論としては余りよろしくないのかと思っておりますので、是非今後もその正確な数字の算定について引き続き教えていただきたい、そのようにお願い申し上げます。
 もう既に、今少し言及させていただきましたけれども、大臣、是非お伺いしたいんです。
 私立高校の授業料が無償化されて、乱暴な言い方をすれば、授業料が安いから公立に行こうという時代はもう変わってきている。子供たちが教育の質によって選ぶ、そのような選ばれる教育を提供していくような、そのような時代に変わってきたと思います。その中で、公立高校の役割は何なのか、もう一度我々も考え直さないといけないと思います。
 公立高校の役割、今の公立と私立の役割は都道府県によって違うと思います。私立が、まあ何というんでしょうか、いわゆる進学校として位置付けられている都道府県もあれば、私立が、ごめんなさい、少し乱暴な言い方をすれば、滑り止めとして位置付けられているような都道府県もあると理解しております。
 ただ、一般論としましては、やはり公的機関の役割は民間の提供がし難いサービスをしっかりとカバーしていくという点であれば、過疎地域、特別支援学級、専門高校等の運営に公立高校の役割、いよいよ強まっていくんではないかと思いますけれども、大臣の見解をお聞かせいただけますでしょうか。

 文科相 公立高校は、地理的な状況、また生徒の学習ニーズ、また地域における人材育成、少子化の影響による学校数、生徒数の状況など地域の実情を踏まえまして、域内のこの高校教育の普及と機会均等を図る重要な存在でございまして、この公立高校の役割は特定の分野のみに限定されるものではないというふうに私ども考えております。公立高校はそれぞれ歴史と伝統がございまして、長きにわたって地元の人々と密接に連携しながらその地域の高校教育を築いてきたと承知をしているところでございます。
 今後とも、各都道府県教育委員会等におきまして、私立のこの配置状況も十分に考慮した上で、地域の実情に応じた教育環境を整えていただくものというふうに考えているところでございます。
 いずれにいたしましても、今般の高校無償化の議論におきましても、専門高校を含む公立高校への支援の拡充などについてもしっかりと検討してまいりたいというふうに思っております。

 金子道仁氏 まさにその議論の中で、公立高校もこういう状況の中で、私立高校と同様に学校ごとに教育の質の向上を図っていくために、教員の配置や施設整備への投資についてももっと自由度を上げていただきたい、そのような意見も聞くことがございます。
 公立高校それぞれの学校の裁量の範囲を広げるべきだ、そのような意見に対して文科省としてはいかがお考えでしょうか。

 初等中等教育局長 今、公立高校のそうした裁量を広げるべきではないかという御質問でございますけれども、これは、公立高校における教員配置あるいは設備投資等については、設置者の責任でこれは行われているものでございますけれども、例えば教員配置につきましては、個々の学校に置くべき教職員の総数というのを基礎とした上で、地域の実情等に応じた配置を可能とするとともに、地方財政措置の裏付けとするために、まさに高校標準法におきまして教職員定数の総数を標準として定めてございまして、それを踏まえて、それぞれの県内での状況の中において、人材育成の観点なども踏まえまして具体的な配置について決定することができるということとなっているわけでございます。
 公教育の一端を担う私立高校につきましては、基本的には民間企業という性格がございます。ですから、おのずから公立高校と私立高校におきましては、それぞれの設置主体に基づく、地方公共団体それから学校法人という、これは違いがあります。ただ、公立高校におきましても、そうした高校標準法のそうした標準の枠の、地方財政措置の裏付けの中で、設置者の御判断でいろんな学科の創設あるいは改編、それから定員の設置等が自由に行うことができるというふうになっているところでございます。

令和7年 通常国会質疑から