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令和7年通常国会質疑から【第13回】

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行財政

 国会では、法案審議のほか、議員が提示した課題に対して政府の見解をただす一般質疑が行われている。今年の通常国会質疑のうち、6月13日の衆議院文部科学委員会では、「学校教育を取り巻く諸課題」に焦点を当て4人の参考人を招き、議員が質問を重ねた。

幼児教育センターの役割と幼稚園教育の意義

 船田元氏(自民) 私は私立幼稚園の運営にも関わっており、幼稚園教育、幼児教育全体に強い危機感を持っている。
 かつては、幼稚園には幼稚園教育要領、保育所には保育所保育指針があり、前者は教育、後者は養護や健康・安全に重点が置かれてきたと理解している。
 しかし、認定こども園という新たな制度が始まり、教育と保育を併せ持つ教育・保育要領が設定された。さらに、小学校への円滑な接続が課題となり、幼稚園・保育所・認定こども園の三施設における教育・保育内容の整合性が図られている。
 こうした取組を後押しする形で、幼児教育センターが各都道府県に設置され始めているが、その位置づけや役割、今後への期待について、より詳しく考えを聞きたい。

 無藤隆白梅学園大学名誉教授 幼児教育センターは主に都道府県が設置主体であり、一部政令指定都市などにも設けられている。現在、全体の約八割の自治体に設置されていると聞いている。
 船田委員の地元である栃木県は、幼児教育センターが先駆的に設置された県の一つである。
 現在の幼児教育は、幼稚園、保育所、認定こども園と非常に多様化しているが、どの施設に通っても、すべての子供が質の高い共通の幼児教育を受けられる体制を整えることが重要である。幼児教育は、その後の学校教育、さらには人生の基盤をつくるという意味で極めて重要である。
 幼児教育は義務教育ではないが、九十数%の子供が通っており、義務教育に準ずる重要性を持つ。そのため、都道府県が責任を持って取り組み、文部科学省がそれを支援する形が取られている。
 具体的な役割としては、幼稚園・保育所・認定こども園の教員・保育士の研修を担い、その内容を共通化していくことが中心である。また、センター職員が各園を訪問し、指示を与えるのではなく、それぞれの園の理念を生かしながら、より質の高い保育・教育が行われるよう支援する役割を果たしている。

 船田元氏(自民) 現在、全国の幼稚園は公立・私立合わせて約七千五百園、認定こども園は約九千二百園、保育所は約二万三千園ある。幼稚園は減少傾向にある一方、認定こども園は増加しており、保育所はやや減少していると聞いている。
 そのような中で、様々な事情から認定こども園へ移行せず、幼稚園として幼児教育を重視し続けている施設も現在なお存在している。この点について、どのように考え、評価するか。

 無藤隆白梅学園大学名誉教授 日本の幼児教育は、明治初期に幼稚園から始まった。その後、保育所が整備され、近年になって認定こども園が加わった。
 幼児教育、とりわけ教育としての質を確保するという点では、幼稚園が先導的な役割を果たしてきたし、現在もその役割を担っていると考えている。
 幼稚園の特色として、標準的な保育時間が四時間程度であり、その前後の時間に保育の準備や振り返り、見直しを日常的に行うことができる点がある。こうした取組は保育所では難しい場合もあり、幼稚園ならではの強みである。
 その意味で、幼稚園は幼児教育の質を高める上で非常に重要な役割を果たしている。
 幼稚園には公立と私立があり、公立幼稚園は子ども・子育て支援制度の中に位置づけられている。私立幼稚園については、その半数近くが同制度に参加し、残りは私学助成によって制度の外に位置づけられているが、実際の教育内容は相互に協力しながら同様の役割を果たしている。今後も幼稚園としての役割を果たし続けてほしいと考えている。

 船田元氏(自民) 共働き世帯の増加により保育需要が拡大していることは事実だが、一方で、家庭教育と幼稚園での幼児教育をうまく組み合わせ、子供にしっかりとした教育を受けさせたいと考える家庭も存在する。
 幼稚園教育が幼児教育の先端的な役割を担い、その成果が認定こども園や保育所にも波及しているという考え方について、どのように考えるか。

 無藤隆白梅学園大学名誉教授 指摘はそのとおりだと考える。近年は保育所においても優れた保育実践が増え、独自の取組が注目されている。
 ただし、幼稚園は比較的、保育に当たる側に時間的なゆとりがあり、家庭との連携に加え、保護者が幼稚園教育に積極的に協力しやすい環境にある。家庭は家庭なりの考えに基づいて家庭教育を行い、それと幼稚園教育が組み合わさることで、より効果的な幼児教育が実現する。
 乳幼児期は園だけで教育が完結するものではなく、家庭での愛情ある養育と一体となって意味を持つ。その点で、幼稚園の果たす役割に大きな期待を寄せており、今後も優れた実践を進めてほしい。
(議事録を要約)

令和7年 通常国会質疑から