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コロナ時代に考えたい学校問題【第112回】

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教師の叱責と生徒の自殺

 顧問の男性教諭が部員を呼び出し、「世の中では立派な犯罪だ」「名誉毀損で訴える」と叱責し、部活を続ける条件として、他の部員とのメールや会話も禁止したが、自殺の間際に、友達にメールを送って身の潔白を訴えたことで裁判になっていることをニュースで知った。またかと溜め息が出た。
 結果として生徒が自殺しているのだから、教師の叱責が自殺へ追い込んだのは明らかで、殺人と同じとも私には思える。
 しかし、それは「想定できなかった」と裁判官は判断した。その「想定できない」が本当に正論なのだろうかと私は聴きたい。
 教師が怒りの感情が押さえられずに話したとしたら、冷静になった時に、再度話し合うことが出来たはずである。そのフォローが曖昧である。
 裁判では、損害賠償は認めなかったが、その行為が生徒本人に及ぼした不適切な事実は認めている。これが現代日本の法の実力であり現状である。勿論、その理不尽さは拭えない。
 そして、ニュースのタイトルには「行き過ぎた教師の指導で」とあった。「指導」と認めている不可思議がある。「指導」とは指示や伝達でなく、納得させる力である。教師の言葉が生徒にどれ程の威圧があったか予想が出来る。部活動という日本独特の文化の中には、こうした暴言が今日も飛び交っていることだろう。それは何のためなのかと、問うてみたい。
 また、担当まかせにしているとこうした不適切な言動が出やすくなる。管理職は巡回すべきであり、日常的に相互から状況を聞き取る習慣がなければ、事が起きてからの対応になってしまう。危機管理とは、常に最悪を想定する事である。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題